任意の命題を導ける「分析的に妥当な」推論 Prior (1960) "The Runabout Inference-Ticket"

  • A. N. Prior (1960) "The Runabout Inference-Ticket" Analysis 21(2), 38-39.

  • ある表現の意味だけから妥当性が生じるような推論を「分析的に妥当」と呼ぶことにする.
  • 連言から連言肢への推論は分析的に妥当な推論の例である.
    • 例:「草は青い,かつ空は青い.ゆえに,草は青い」の妥当性は,「かつ」の意味だけから生じる.
      • 「かつ」の意味は以下の規則によって完全に与えられる:
        1. P と Q の対から言明〈PかつQ〉が形成できる,
        2. 〈PかつQ〉から P が推論できる,
        3. 〈PかつQ〉から Q が推論できる.
  • 「〈P と Q から R がつねに推論でき,かつ R から P が推論でき,Q も推論できる〉ような R は本当に存在するのか?」と問うのは無意味である.
    • 「かつ」を導入したのは,まさにそうした R を形成するためだからだ.
    • 分析的に妥当な推論の場合,表現に伴う推論の妥当性と独立に表現の意味を決定できるわけではない.
  • 以上で説明した意味で,2+2=4 から 2+2=5 への分析的に妥当な推論が存在する:
    • 2+2=4.したがって,2+2=4 tonk 2+2=5.したがって,2+2=5.
      • ただし tonk の意味は以下の規則によって完全に与えられる:
        1. P から任意の Q と合わせて P-tonk-Q が形成できる.
        2. P-tonk-Q から Q を推論できる.
  • 「〈P から R がつねに推論でき,かつ R から Q が推論できる〉ような R は本当に存在するのか?」と問うのは無意味である.
    • 「P かつ Q」が単一の命題を表すかどうかは哲学史上疑われてきた (SE 176a1ff.; Mill, System of Logic I, iv, 3).同様の懐疑が「P tonk Q」に向けられても不思議ではない.だが新たな形式の利便性に鑑みれば,最終的にはより啓蒙された見解が勝利を収めるだろう.