今週読んだ本

フロイト全集 5』

『夢解釈』の後半部。第6章「夢工作」はややマンネリ気味。第7章「夢過程の心理学にむけて」は他の章に輪をかけて思弁的だが面白いのは面白い。心理学史的背景を知りたくなる。

『正義・ジェンダー・家族』

フェミニズム的観点から政治理論の枠組みで特に家族制度における正義を論じたもの。第2章では問題そのものが成り立つことを (サンデル,ブルームの批判を通じて) 弁証し,第3-5章ではその観点から既存の理論 (ウォルツァー,マッキンタイア,ノージックロールズ) を検討する。第6章は所謂「公私二元論」についていくつかの視点から批判を加え,第7章は現実の家族制度において女性が抱える (経済的その他の) 脆弱性について論じる。

簡単に所感を述べると,2-3章の批判パートは特に辛辣で,もう少し charitable に読めるのでは,という気もするが,まあ批判対象を読まないと何とも言えない。とはいえ古典を読むときに差別的想定に sensitive になるべきというのは一般論として正しいだろう。4章の「ノージックの議論からは母系奴隷制が帰結する」という議論は何というか大変哲学らしくて良い。ロールズについては,一方でその具体的構想において家族制度が正当に顧慮されていないことを批判しつつ,他方で根本的な方向性や「二原理」・無知のヴェールといった道具立てについてはそのフェミニスト的ポテンシャルを評価する,という結論を出しており,ごく穏当と思われる。「個人的なことは政治的である」というスローガンが代表する公私二元論批判については,その最もラディカルな解釈 (区別の全面的な破棄) からは距離を置きつつ,(1) 家庭生活における権力の重要性,(2) 公的権力は常に何らかの仕方で家族に介入していること,(3) 養育における家族のジェンダー化機能,(4) 性別分業の結果として二元論的想定は家庭外の領域への女性の進出を妨げること,の四点から支持する。この辺りあまり要点を理解できていなかったので勉強になった。第7章の議論の焦点となっているのは勿論80年代アメリカだが,mutatis mutandis に現代日本にも妥当するだろう。

『国家と秘密』

特定秘密保護法の法案成立を受けた形で刊行された本。日本の公文書管理 (の立ち遅れ) の歴史と現状が平明に解説されている。特定秘密保護法にかんしては最終章で論じられる。なんというか,こういう本を刊行時にぱっと読める瞬発力を身につけたい。