今週読んだ本

『思想』

「感情の歴史学」特集。フレーフェルト「屈辱の政治: 近代史における恥と恥をかかせること」: 国家や個人による辱めに対する意識の近代史における変遷を辿る。1800年前後にひとつの分水嶺があり,それ以降国家による辱めは忌避されるようになったとする。1970年代以降の自意識の肥大というテーゼは興味深いが論拠不明。平山「『体験』と『気分』の共同体: 20世紀前半の伊勢神宮明治神宮参拝ツーリズム」: 戦前日本における伊勢・明治両神宮の参詣をめぐる全体的気分の醸成を跡付ける。「何事のおはしますかは知らねども」という西行の歌が参拝体験を表すクリシェとして機能したしだいの叙述など中々辛辣でよい。そのほかプランバー「恐怖: 20世紀初頭のロシア軍事心理学における兵士と感情」,特集外の論文としては水野「戦後初期オーストリアにおける国民形成のダイナミズム: 戦争犠牲者援護政策にみる妥協の論理」が面白かった。

『論証のレトリック』

『弁論術』のあんちょこ本。特に「アリストテレスのレートリケー理論の概観図」(66-7頁) や巻末付録が便利。ディアレクティケーや形式論理学との関連にも軽く触れている。