中野耕太郎『20世紀アメリカの夢』

20世紀初頭から1973年までのアメリカ史.この時期のアメリカにおける「社会的なもの」への意識の高まりと,社会改革の実現に絶えずつきまとった両義性とを克明に描いている.叙述は冷徹でアイロニカルだが決してシニカルではない.大筋については「おわりに」に簡潔な要約が与えられている.

ごく各論的なことだが,「ルシタニア号事件がアメリカの WWI 参戦の引き金となった」という教科書的な説明*1を本書は俗説として斥けている.いわく,当時の政府はその時点で宣戦を望んでおらず,社会においても厭戦的世論が強かった.ルシタニア号事件原因論はむしろ事後的に国内プロパガンダによって形成された集合的記憶である (pp.50ff.).

*1:例えば手元にある山川の『改訂版 詳説 世界史研究』(2008), 458頁にもそのような記述がある.高校でもそう習ったように思う.