ドヴァール『パース』熊野純彦『西洋哲学史:古代から中世へ』
今週読んだ本。
ドヴァール『パース』
パース哲学の入門書で,彼の現象学(ないしファネロスコピー),規範学(とりわけ論理学),形而上学を,この順に解説する。
目新しいアイデアの宝庫という趣があり,わくわくしながら読んだ。よくまとまっており読みやすいが,目新しいぶん飲み込みづらい議論もあり,特に以下のいくつかの箇所は何だか分からないという印象が残った。すなわち3章2節のカテゴリーの導出(とりわけ「グラフ理論」の果たす役割),5章3節における「文字通りわれわれは,思考している記号そのものである」(125頁)というアイデア,言い換えれば 'interpretant' 概念の内実,および9章の自然哲学的な叙述のほぼ全部。飲み込めないとはいえ,いずれも何か興味深いことを述べているような気はするので,適宜原論文に当たりたい。最後の点については伊藤邦武『パースの宇宙論』に説明があるかもしれない。
熊野純彦『西洋哲学史:古代から中世へ』
二巻本の第一巻で,初期ギリシアからオッカムまでを主に扱うが,現代のテクストも適宜参照されている。
個人的にはボエティウスに一つの章が割かれていることが興味深く感じられた。それというのも,同時並行に読んでいたコプルストン『中世哲学史』がボエティウスの哲学的独創性を全然評価しておらず,62章中わずか1章に,カッシオドルス,イシドルスとともに押し込めていたためで,本書を読むかぎりこれはあまり正当な評価とは言えないように思う。