『形而上学』I1, 1052a15-b1 事物が一つであると語られる四方式

Met. I1, 1052a15-b1.


[1052a15] 一が多くの仕方で語られるということは,どれほど多くの仕方で〔事物が語られる〕かについて区別した論考において述べられた.他方,多くの仕方で述べられるとはいえ,第一であり,自体的で非付帯的な仕方で一であると語られるものどもの概括的な方式は四つある.

[1052a19] すなわち,端的に連続的,またはとりわけ自然本性上連続的であって接触や縛り紐によってそうなのではないもの(そしてそのうちいっそう,またより先に一であるのは,その運動がいっそう不可分でいっそう単純なものである).

[1052a22] さらに,全体であり何らかの形態ないし形相をもつものも,そうしたものであり,かついっそうそうである.何かが自然本性上そのようであり,糊や釘や縛り紐によってそうである限りのものどものように強制によってそうであるのではなく,むしろそれ自身のうちに,それにとって連続的であることの原因をもつならば,この上なくそうである.〔或るものは〕運動が一つであり場所や時間の点で不可分であることによってそうである.それゆえ,或るものが自然本性上,第一の運動の第一の原理をもつなら――私が言っているのは例えば場所運動の原理である円運動のことだが――,それが一なる第一の大きさであることは明らかである.

[1052a29] さて,或るものどもはこのように一である,〔すなわち〕連続的または全体であるのだが1,或るものどもはその説明規定が一つであるようなものどもである.そうしたものどもは,それらの知性認識が一つであり,そうしたものどもは,それらの〔知性認識〕が不可分であるが,種的または数的に不可分なものの〔知性認識が〕不可分なのである.そして,数的には個別的なものが不可分であり,種的とは可知的なものや知識の点でということである.したがって,諸実体にとって一つということの原因が第一に一つであるのかもしれない.

[1052a34] さて,一つであるものはこれだけの数の仕方で語られる.すなわち自然本性上連続的なもの,全体,および個別的なものと普遍的なものであり,これらは全て,不可分であることによって一つである.すなわち或るものどもはその運動が,或るものどもはその知性認識が,或るものどもはその説明規定が,不可分であることによって.

注解 (Castelli)

  • 1052a15-19
    • a15-16 はおそらく Δ6 を指す.
    • "τῶν πρώτων καὶ καθ᾽ αὑτὰ λεγομένων ἓν ἀλλὰ μὴ κατὰ συμβεβηκός" とはいかなることか.
      • 自体的な S is P は S または P の何であるかに存する (APo. I 4).
      • ゆえに,X が付帯的に一つであるのは,一つであることが X と一の何であるかのいずれにも存しない場合である.X が統一的本質をもたない場合がこれにあたる (例: X = 白くて音楽的なもの,賢いソクラテス).
      • 以降の議論からして "τῶν πρώτων" は実体を指す.
  • 1052a19-21
    • (a) 端的に連続的なものと,(b) 自然本性上連続的なものとが区別される.さらに後者には (b*) 運動が不可分なものがある.
      • (a) の ἁπλῶς は制約と一般化のいずれでもありうる.
        • 制約であれば,当てはまるのは幾何学的対象などの連続量.
        • 一般化であれば,人工物を含む,延長をもつ非分散的対象全般が当てはまる.
      • (b) の φύσει は,おそらく μὴ ἁφῇ μηδὲ δεσμῷ 以上の意味ではなく,人工物を排除しない.
      • (b*) は運動の単純性を対象の連続性の基準として導入する.
        • 運動の単純性の基準としては,時間的連続性のほかに,変化率の均一性,始点・中間・終点が同一の質的スペクトラムに位置すること,がある (Phys. V).
        • Phys. V では運動者が運動の統一性を規定するのに対し,I1 では運動が運動者の統一性を規定しているように見える,という問題がある.
          • ここではさしあたり,アリストテレスの理論において,対象と運動の単純性が基本的に対応する点に留意すればよい (DC I 2).
            • 同質部分的な基本要素や非同質部分的な身体の部位も,それらの運動の特徴をもとに,一定の度合いで連続的であると語られうる.
  • 1052a22-28
    • "ἀδιαίρετον τόπῳ καὶ χρόνῳ": χρόνῳ は全体が同時に動くこと,ないしは時間的断絶なしに動くことを意味しうる.τόπῳ は通常移動のないことを意味する.どちらも天球の運動に特徴的.
    • 場所移動はその他の運動に先行し,円運動はその他の場所移動に先行する (Phys. VIII 7; DC I 2).
    • 運動の単純性と順序が対象のそれに対応するなら,第一の運動を特徴にもつものが,「一なる第一の大きさ」である.
      • この言い回しは,アリストテレスが量の領域における順位付けに関心を有したことを示唆しうる.
  • 1052a29-34
    • λόγος の単一性 (i.e. 単一の νόησις により把握されること) という新たな基準が導入される.
    • 単一性の原因はおそらく形相ないし本質である (cf. Z17).ただし実体論をどの程度解釈に持ち込むかで議論の含意が変わる.
    • 定義の諸要素が個別の存在論的要素を指すとき,定義が統一的対象を指すのはなぜか,は問題である.
      • とはいえ少なくとも,定義の統一性が対象の統一性に依存することは言える.
      • それゆえ対象の統一性の度合いに対応する定義の統一性の度合いがあることになる (が I1 では明記されない).
    • 説明規定の単一性は思考の単一性から説明される.
      • DA III 6 は思考の不可分性をたんに時間的に解すべきでないとはっきりさせている.可分的直線を不可分の時間で思考することは可能である.
      • 思考の単一性は結局は存在論的事実に依拠するものと思われる.
    • εἴδει = τῇ ἐπιστήμῃ: 科学的知識は普遍のみを対象にし,個物は対象にできない.
  • 1052a34-b1
    • 連続的なものと全体は運動の単純性ゆえに一つであり,普遍と個物は思考ないし説明規定の不可分性ゆえに一つである.
    • 運動や説明規定の単一性は対象の単一性に依存しており,前者は後者の現れである.運動/説明規定の二分法は感覚/思考の二分法に対応する (cf. DA III 1, 4).
      • 形状などでなく運動に着目する点はデモクリトス批判 (PA I 1; Met. A4) と平行的.

(1章の一般的序論,pp.20-24)

アリストテレスは I1-2, Δ6 で一つの諸義を検討する.他の箇所では特定のものの単一性が扱われる (H6: 定義,数,複合実体,Pol. II.1-2: ポリス,Poet. 23: 悲劇と叙事詩).また他の哲学者の批判において単一性が扱われる (Phys. I 2-3, Met. M7, N1, 4).

総じてアリストテレスは以下の異なる問いをはっきり区別しない:

  1. 「一つ (one)」は何を意味するか.
  2. 「一 (the one)」は何を指示するか.
  3. 何かが一つであるとはいかなることか.
  4. 一とは何か.
  5. いかなる (種類の) 対象が一つであると言いうるか.
  6. 一とはいかなる (種類の) 対象か.

以下が語彙上の混乱の原因となる:

  • τὸ ἕν は一つである対象と一つという属性の両方を指しうる (Phys. I 3; Met. Z6).アリストテレスは両者をはっきり区別しない.ゆえに,「一つ」をめぐる問題 a, c, d と「一」をめぐる問題 b, e, f は緊密に絡み合っている.
  • また τὸ ἕν は語と事物の両方を指しうる.この点でも明瞭な区別は稀である.ゆえに,a, b と c, d の明瞭な区別もない.

とはいえ,c と d の各々に対応する二筋の探究と解答が区別できる (もっともアリストテレス自身が行っている区別ではない).

  • 何かが一つであるとはいかなることか? ――何らかの観点において不可分であることである.
  • 一とは何か? ――一定の対象領域の尺度である.

アリストテレスにとって,数の原理としての一は数的単位である.これと〈あるもの〉に述定される一との関係は解釈を要する.

数的単位は端的に (あらゆる観点で) 一である.数的単位は単一のトークンではなく,離在せず,加算して数になる (cf. Annas 1976, 26-41).

特定領域における一とは,当の領域の尺度となる単位である.I2 によれば,種 K における一とは,他の Ks の構成的原理であるところの,K の特定の種類である.

I1 は何かが一つであるとはいかなることかを論じる:

  • 1052a15-b1 はものが自体的に一つである四方式を扱い,
  • 1052b1-24 はある場合に一つであることが測量の単位であることを意味するという考えを展開する.
  • 1052b24-1053b3 は尺度の諸特徴を明示し,
  • 1053b4-8 は 1052b1 以降の議論を要約する.

  1. Ross によれば ᾗ Christ: ἢ E2AbAl.c : om. E1JΓ. ただし Castelli によれば “β simply has η”. Ross に反し α で読む.