〈ありはしないもの〉の言表不可能性の第二論証: 数との不可分性 『ソフィスト』238a-c

Sph. 238a1-c12.


客人 まだ大きなことを言うべからず.というのも,幸せな人よ,まだあるのであって,次のものこそ諸々の困難のなかでも最大であり第一のものだからだ.というのも,それの起源そのものをめぐるものになっているから.

テアイテトス どうしてそう仰るのですか.躊躇わずに語ってください.

客人 一方で,〈あるもの〉には,〈あるもの〉どものうちの別の何かが付け加わりうる.

‌テアイテトス もちろん.

‌客人 他方で一体,〈ありはしないもの〉には,〈あるもの〉どもの何かが付け加わることが可能であると,私たちは言うだろうか.

テアイテトス どうしてそんなことを言うでしょうか.

‌客人 数の全体を,私たちは〈あるもの〉どものうちに措定する.

テアイテトス ええ,他の何かをも〈あるもの〉として措定すべきである以上は.

客人 それでは,私たちは,数のうちの多も一も〈ありはしないもの〉に対して適用しようと試みないようにしよう.

テアイテトス 言論が主張するところによれば,私たちがそのように試みるのは,見たところ,適切ではないのかもしれません.

客人 では,ひとはどのようにして,〈ありはしないもの〉どもや〈ありはしないもの〉を,数から切り離して,口を通して言い表したり,あるいはそもそも思考によって把握することができるだろうか.

‌テアイテトス どうしてそんなことが言えるでしょう.

客人 「ありはしないものども」と私たちが述べるときは,数のうちの多を付加的に措定することを,私たちは試みるのではないか.

テアイテトス もちろん.

客人 一方で「ありはしないもの」は,今度は一つのものとして付加的に措定するのではないか.

テアイテトス それはまったく明瞭です.

客人 しかし,〈ありはしないもの〉に〈あるもの〉を適合させようと試みるのは,正当でも適切でもないのだ.

テアイテトス 仰ることは全くその通りです.

客人 それでは,〈ありはしないもの〉をそれ自体として適切な仕方で言い表すことも,言うことも,思考することも可能ではなく,それは思考不可能であり,語られえず,言い表しえず,論じえないのだ.

テアイテトス 全くその通りです.

Ξένος μήπω μέγ᾽ εἴπῃς: ἔτι γάρ, ὦ μακάριε, ἔστι, καὶ ταῦτά γε τῶν ἀποριῶν ἡ μεγίστη καὶ πρώτη. περὶ γὰρ αὐτὴν αὐτοῦ τὴν ἀρχὴν οὖσα τυγχάνει.

Θεαίτητος πῶς φῄς; λέγε καὶ μηδὲν ἀποκνήσῃς.

Ξένος τῷ μὲν ὄντι που προσγένοιτ᾽ ἄν τι τῶν ὄντων ἕτερον.

Θεαίτητος πῶς γὰρ οὔ;

Ξένος μὴ ὄντι δέ τι τῶν ὄντων ἆρά ποτε προσγίγνεσθαι φήσομεν δυνατὸν εἶναι;

Θεαίτητος καὶ πῶς;

Ξένος ἀριθμὸν δὴ τὸν σύμπαντα τῶν ὄντων τίθεμεν.

Θεαίτητος εἴπερ γε καὶ ἄλλο τι θετέον ὡς ὄν.

Ξένος μὴ τοίνυν μηδ᾽ ἐπιχειρῶμεν ἀριθμοῦ μήτε πλῆθος μήτε ἓν πρὸς τὸ μὴ ὂν προσφέρειν.

Θεαίτητος οὔκουν ἂν ὀρθῶς γε, ὡς ἔοικεν, ἐπιχειροῖμεν, ὥς φησιν ὁ λόγος.

Ξένος πῶς οὖν ἂν ἢ διὰ τοῦ στόματος φθέγξαιτο ἄν τις ἢ καὶ τῇ διανοίᾳ τὸ παράπαν λάβοι τὰ μὴ ὄντα ἢ τὸ μὴ ὂν χωρὶς ἀριθμοῦ;

Θεαίτητος λέγε πῇ;

Ξένος "μὴ ὄντα" μὲν ἐπειδὰν λέγωμεν, ἆρα οὐ πλῆθος ἐπιχειροῦμεν ἀριθμοῦ προστιθέναι;

Θεαίτητος τί μήν;

Ξένος μὴ ὂν δέ, ἆρα οὐ τὸ ἓν αὖ;

Θεαίτητος σαφέστατά γε.

Ξένος καὶ μὴν οὔτε δίκαιόν γε οὔτε ὀρθόν φαμεν ὂν ἐπιχειρεῖν μὴ ὄντι προσαρμόττειν.

Θεαίτητος λέγεις ἀληθέστατα.

Ξένος συννοεῖς οὖν ὡς οὔτε φθέγξασθαι δυνατὸν ὀρθῶς οὔτ᾽ εἰπεῖν οὔτε διανοηθῆναι τὸ μὴ ὂν αὐτὸ καθ᾽ αὑτό, ἀλλ᾽ ἔστιν ἀδιανόητόν τε καὶ ἄρρητον καὶ ἄφθεγκτον καὶ ἄλογον;

Θεαίτητος παντάπασι μὲν οὖν.

要約

〈あるもの〉には〈あるもの〉が付け加わりうるが,〈ありはしないもの〉には〈あるもの〉が付け加わることはできない.ところで,数は〈あるもの〉である.ゆえに,〈ありはしないもの〉には一も多も適用できない.しかるに,〈ありはしないもの〉は単数形か複数形でしか (i.e. 数を切り離しては) 言い表せない.ゆえに,〈ありはしないもの〉それ自体を言い表すこと・思考することは不可能である.

先行研究

  • μήπω μέγ᾽ εἴπῃς: 'There is a tragic tone' (Campbell). Cf. S. Fr. 662,1 (Crivelli).
  • συννοεῖς: "Do you gather or collect" (as the sum of the preceding remarks).「以上をまとめて君にわかるだろうね」(藤沢).Crivelli は単に 'understand'.
  • [A]n attribute that implies existence can be assigned to what exists, but [it] cannot be assigned to what does not exist ... [I]t is like claiming that an attribute that implies whiteness cannot be assigned to what is not white (Crivelli).