『トピカ』I.1 #1 推論の三分類

Top. I.1 100a18-101a4.

[100a18] 本論考の目的は,提出された全ての問題について,エンドクサから我々が推論しえ,自ら議論を被りつつ反対のことを何も我々が言わない探究方式を発見することである.そこで第一に,「問答法的推論」が把握されるように,「推論」とは何か,その諸々の種差は何かを述べねばならない.というのも,この問答法的推論を,以下の論考にもとづいて,我々は探究しているのだから.

[100a25] 推論とは,そのうちで幾つかのことが措定されたとき,措定されたことどもとは異なる何かが,措定されたことどもを通じて必然的に帰結するような,議論である.そして一方で,論証であるのは,真であり第一であることどもから,あるいは,何か第一であり真なることどもを通じて,それらをめぐる認識の始点を把握しているようなことどもから推論があるときである.他方で,問答法的推論なのは,エンドクサから推論する推論である.一方で,真であり第一であるのは,他のことどもを通じてではなく,それら自体を通じて信憑性をもつことどもであるが (というのも,知識的な諸始点において〈何ゆえ〉を探究すべきではなく,むしろ諸始点のそれぞれがそれ自体として信憑性あるものであるべきだから),他方でエンドクサであるのは,全ての人々,または大多数の人々,または知者たち,すなわち知者たちの全員あるいは大多数,または最もよく知られており評判あるエンドクソイス知者たちに思われていることどもである.争論的推論であるのは,見かけ上のパイノメノーンエンドクサだがエンドクサでありはしないものどもからの推論,およびエンドクサないし見かけ上のエンドクサからの,見かけ上の推論である.というのも,見かけ上のエンドクソンすべてが,エンドクソンでありもするわけではないから.というのも,述べられるエンドクサのどれ一つ,表面上は完全に〔エンドクサの〕見かけをもちはしないから――争論的議論の諸始点の場合に〔エンドクサの見かけを〕もつことになるようには.というのも,些細なことをも見て取れる人々にとっては,それらの内なる偽なる本性は,直ちに,かつ大抵の場合,一目瞭然だから.さて,上述のものどものうち,一方で前者の争論的推論は推論でもあると言うことにしよう.他方で残るものは,争論的推論ではあるが,推論ではない.推論していると現れてはいるが,推論していないからである.

要約

  • 論考の主題: エンドクサを前提とし,自ら吟味されつつ矛盾したことを言わない探究方式 (i.e. 問答法的推論) の発見.
    • まず推論の分類から問答法的推論を把握する.
  • 推論 := 前提1が措定されたとき,それらと異なる結論が,それらから必然的に帰結する議論.
    • 推論には,論証,問答法的推論,争論的推論がある.
      • 論証: 諸前提が真かつ第一である,または真かつ第一の事柄を通じて把握される.
        • 真かつ第一 := それら自体を通じて信憑性をもつ (他の〈何ゆえ〉をもたない).
      • 問答法的推論: 前提がエンドクサである.
        • エンドクサ := (1) 全ての人々,(2) 大多数の人々,(3a) 全ての知者,(3b) 大多数の知者,(3c) 最も評判のある知者にそう思われていること.
      • 争論的推論: (a) 前提が見かけ上エンドクサだがエンドクサでないもの,(b) 見かけ上推論だが推論でないもの.
        • (a) は推論だが (b) は推論ではない.

先行研究

  • συλλογισμός: Brunschwig の訳は raisonnement déductif ou déduction. 103b2-19, 105a10-19 では λόγος, πίστις を ἐπαγωγή と二分する.
  • ἔνδοξον: この性質は意見・考えに (権利上ではなく) それを代表する人々ゆえに事実上属する性質.「見かけ上だけエンドクサ」ということが可能なのはこのため.
  • Brunschwig は προβλήματος を削除する (Al. が削除,Λ が τοῦ προτεθέντος を削除; 一方が gloss と推測).πρόβλημα はそれほど一般的な語ではなく準備なしに導入しがたい2
  • 'τοῖς καὶ μικρὰ συνορᾶν δυναμένοις κατάδηλος': Colli は「小さなことしか分からない人々にも」,Brunschwig 以降の訳者 (Smith, Wagner & Rapp, 山口) は「小さなことも分かる人々に」.
    • 〔Brunschwig が少し込み入った議論をしているが,追いきれていない.いずれにせよ,エンドクサの性質に関するこの辺りの規定は,難読ではあるが重要だと思われる.要検討.〕

  1. 「前提」「結論」という術語は未登場.

  2. 採らない.術語の予告なき登場がアリストテレスにあってそれほど珍しいとも思われない.