『メタフュシカ』Γ4 #6 PNC 否定論者の分類と各々への反論

Met. Γ4 1008a7-34.

[1008a7] さらに,あるいは万物についてこのようであり,すなわち白く,かつ白くなく,あり,かつありはしないのであって,他の言明や否定言明をめぐっても同様の方式であるか,あるいはそうではなく,むしろ或るものどもについてはそうだが,あるものどもについてはそうでないか,である.

[1008a11] そしてもし全てについてそうであるのでなければ,それらの言明は合意されうる.だがもし全てについてそうであるなら,「それらについて〈言明すること〉がある限りのものどもについて〈否定を言明すること〉もあり,それらについて〈否定を言明すること〉がある限りのものどもについて〈言明すること〉もある」か,あるいは,「それらについて〈言明すること〉がある限りのものどもについて〈否定を言明すること〉もある一方,それらについて〈否定を言明すること〉がある限りのものども全てに〈言明すること〉が属しはしない」かである.

[1008a15] そして一方で,もしそのようであるなら,堅固な仕方で何かがありはしないであろうし,それは確固たる判断であり,そして〈ありはしないこと〉が何らか確固としてよく認識される事柄であるなら,対立する言明はよりよく認識されうる.他方,〈否定を言明すること〉がある限りの事柄を〈言明すること〉も同様であるなら,例えば「白い」と語り,今度は「白くない」と語るように,真なることを区別しつつ語るか,そうしないかが必然である.

[1008a20] そしてもし真なることを区別するのでなしに語るなら,これらのことを語っておらず,何ものもありはしないことが必然であり (だが,ありはしないものが発話したり歩いたりすることが,いかにしてありえようか),万物も先述の通り一つであるだろうし,人間も神も三段櫂船も,それらの反対の言明も同一であろう.各々に関しても同様であるなら,何ものも別のものと決して区別されないだろう.というのも,もし区別されるだろうとすれば,それは真であり固有であるだろうから.

[1008a30] 同様にして,区別しつつ真なることを言いうるとしても,上述のことが帰結し,これに加えて全ての人々が真なることを言い,かつ全ての人々が偽なることを言うこと,また自分自身が偽なることを述べているということで自分自身と合意すること,が帰結する.それと同時に,何に関してもこの人に対する吟味がないことは明らかである.というのも,何も語っていないから.というのも,そのような仕方で語るわけでも,そのようでない仕方で語るわけでもなく,むしろそのような仕方かつそのようでない仕方で語るのだから.かつ反対にこれら両者,つまりこのような仕方であり,かつこのようでない仕方であるということの否定を言明している.というのも,そうしなければ,既に何か規定されたものがあるだろうから.

要約

  • (I) ∀x∀F(Fx → ¬Fx) か (II) ∃x∀F(Fx → ¬Fx) ∧ ∃x∃F¬(Fx → ¬Fx).
    • (II) の場合,例外的な言明については合意できる.
    • (I) の場合は (i) ∀x∀F(Fx ↔ ¬Fx) か (ii) ∀x∀F(Fx → ¬Fx) ∧ ¬∀x∀F(¬Fx → Fx).
      • だが (ii) はありえない: ∀x∀F¬Fx が確固として認識されるが,¬Fx (ありはしないこと) より「あること」の方がよりよく認識される.
      • (i) なら,(a) Fx の言明と ¬Fx の言明を区別するか,(b) 区別しないか.
        • (b) 区別しないなら,何も語っておらず,何もありはしない (すると,主張者自身ありはしないものになってしまう).また任意の述語・述定対象が同一になる.
        • (a) 区別しても (b) の場合と同じことが帰結する.
        • かつ,全ての人が真なることと偽なることを言っていること,
        • および,自分自身が虚偽を言っているということにコミットすること,が帰結する.
        • さらに,この人の述べることは吟味検討できない (この人は何も述べていないから).

先行研究

CN:

  • (a) に関しては Tht. 170-171 がパラレル.ここで Prot. は自分と反対の立場を認め自分の立場の誤りを認めさせられているわけではない.むしろ対立する立場の両方を認めることになる.
  • (ii) に関して: dire « non blanc » suppose qu'on sait ce qu'est « blanc », alors que bien évidemment énoncer « l'homme n'est pas blanc » ne suppose pas qu'on sache que l'« homme est blanc » (Alex. は De Int. 5, Bonitz は的確にも APo. I25 を参照).
  • 1008a12 冠詞を取る1

  1. ここでは採らない (諸写本に従う).