『魂について』II.6 感覚対象の分類: 固有,共通,付帯的

DA II.6 (418a7-25).


[418a7] 各々の感覚ごとに,感覚されうるものについて最初に述べなければならない.感覚されうるものは三通りに語られる.それらのうち二つはそれら自体として感覚され,一つは付帯的に感覚されると我々は主張する.前二者のうち一つは各々の感覚に固有のものであり,一つは全感覚に共通のものである.

[418a11] 「固有」と私が言うのは,別の感覚によって感覚することがあってはならないもののことであり,かつそれについて誤認することもあってはならないものことである.例えば視覚は色に属し,聴覚は音に属し,味覚は味に属する.触覚は多くの種差をもつ.だが少なくとも個々の感覚はこれらについて判別するのであり,そして色であるとか音であると誤認するわけではない.むしろ色づいているものが何であるか,またはどこにあるのか,あるいは音を出しているものが何であるのか,またはどこにあるのか,ということを誤認するのである.

[418a16] さて,こうしたものが個々の感覚に固有であると語られる一方,運動・静止・数・形・大きさは共通であると語られる.というのも,こうしたものはどの感覚に固有のものでもなく,全ての感覚に共通であるから.というのも,何らかの運動は触覚によっても視覚によっても感覚されうるから.

[418a20] 付帯的に感覚されうると語られるのは,例えば白いものがディアレースの息子であるような場合である.すなわち,ひとが感覚するものが白いものに付帯しているのだから,付帯的にひとはこのことを感覚するのである.それゆえにまた,何ものもそうしたものとしては感覚されうるものによって作用を受けないのだ.

[418a24] それ自体として感覚されるもののうち,固有なものが優れて感覚されるものであり,各々の感覚の本質存在は,本性上,これらに対するものである.

要約

  • [418a7] 感覚対象は三通りある: (1) 固有,(2) 共通,(3) 付帯的.
    • [418a11] 固有の感覚対象: 一種類の感覚によって感覚されるもの (e.g. 色,音,味).
    • [418a16] 共通の感覚対象: 全ての感覚に共通するもの (運動・静止・数・形・大きさ).
    • [418a20] 付帯的な感覚対象: 感覚対象に付帯するもの (e.g. ディアレスの息子).
  • [418a24] 固有なものが優れて「感覚されるもの」.各感覚の本質存在はこれらに相関する.

先行研究

  • Shields は 'οὐκ ἀπατᾶται ὅτι χρῶμα οὐδ' ὅτι ψόφος' (a15) を 'is not deceived that there is color or that there is sound' と訳し,この条件を '[an object] presents as somehow deception-proof' (224) と敷衍する.他方で中畑訳は「色であること,音であることに関するかぎりでは誤ることはない」で,読みようによっては (つまり X への述定が X の存在を含意すると理解しなければ) こちらの方がやや弱い条件になる.後者に従う.