『魂について』II.4 #2 栄養摂取の質料的説明に対する批判

DA II.4 415b21-416a29.


[415b21] だが実際,場所的運動が第一にそこからあるところのものも,魂である.だが全ての生物にこの能力が帰属するわけではない.性質変化と成長も魂に即してなされる.というのも,感覚は何らかの性質変化であると思われるのであり,魂に与らないものは何一つ感覚しないから.成長と衰微についても同様である.というのも,何ものも栄養摂取せずには自然的に衰微することも増大することもなく,生に与らないものは何一つ栄養摂取しないから.

[415b28] エンペドクレスが以下のことを付け加えつつ述べていたのは,立派ではなかった.すなわち,「成長が植物に起きるのは,下方へは土が自然本性にもとづいてそのように移動するがゆえに根を張り,上方へは同様にして火のゆえに〔成長するの〕である」.というのも,「上方」も「下方」も立派に捉えていないから.というのも,全ての生物にとっての「上方」と「下方」が万有にとってと同一であるわけではなく,むしろ,道具が異なるとか同じであるということは働きの点で語るべきだとするなら,動物に頭がある仕方で植物には根があるのだ.これに加えて,火と土は反対方向に移動するのだから,結合するものは何であるのか? というのも,何か妨げるものがなければ,引き裂かれるだろうから.もし妨げるものがあるだろうとすれば,それが魂であり,成長と栄養摂取の原因である.

[415b8] 火の本性は端的に栄養摂取と成長の原因であると,或る人々には思われている.諸物体や諸基本要素のうち,火だけが栄養摂取し成長すると思われもするからである.それゆえ,植物や動物において働いているものは,この火であると,ひとは想定しうる.だが,或る仕方で補助原因であるにせよ,端的には原因ではなく,むしろ魂がいっそう〔原因である〕.というのも,火の成長は可燃物がある限り無限に続くが,自然的に構成された全てのものには限りがあり,増大の大きさと比率があるから.これら〔大きさと比率〕は魂に属するのであり,火には属さない.すなわち質料よりも説明規定に属するのである.

[415b19] 栄養摂取能力と生殖能力は魂の同一の能力であり,栄養摂取について最初に規定する必要がある.他の諸能力に対してこの働きによって区分されるからである.栄養は反対のものにとっての反対のものであるが,全てのものが全てにとっての栄養ではなく,むしろ反対者のうち互いからの生成するのみならず,成長もしている限りのものが栄養だと思われる.というのも,多くのものは互いから生成するが,全てが量的ではないから−−例えば病気であるものから健康なものになるように.だがそれらも同じ方式で互いにとって栄養であるわけではなく,むしろ水は火にとっての栄養だが,火は水の栄養にはならない.ゆえに,単純物体においてはこれらが一方で養うものであり,他方で養われるものであると思われる.

要約

前回は魂が (I) 始動因,(II) 目的因,(III) 本質存在であるとされた.

  • (I) 魂は場所的運動・感覚 (性質変化)・成長衰微の原因である.
  • エンペドクレスは基本要素の上方・下方への運動から生物の成長を説明したが,それは以下の点で誤っていた.
    • 何が「上方」「下方」かは生物によって異なる.
    • 物質的な統一性が説明できない (統一性を説明するのは魂だが,そうすると説明が循環する).
  • 或る人々は火を栄養摂取の原因とする.だが,火は補助原因にすぎない.
    • ∵ 生物の増大は大きさと比率が決まっている.これを決めるのは魂である.
  • 栄養摂取能力 = 生殖能力.前者の特徴がこの能力を他から区別する.
    • 〈栄養−栄養摂取するもの〉は (i) 互いに反対のものであり,(ii) 成長しうるものであり (iii) 非対称的関係をもつ.
    • 単純物体においては,火が養われるもの,水が養うものだと思われる.

訳注

  • b28 は Ross の句読法で読む.