『魂について』II.3 #2 魂の諸能力は個別的に探求すべきである
DA II.3 414b20-415a13.
[414b20] それゆえ,魂と形の説明規定は同じ方式で単一であるのだろう.というのも,三角形やそれに引き続く諸々の形を超えてあちらに形があるわけではなく,既に語られた魂を超えてこちらに魂があるわけでもないからである.形についても,全ての形に適合し,いかなる形にも固有ではないような,共通の説明規定がありうる.先述の魂についても同様である.それゆえ,これらについても他の事柄についても,〈あるもの〉どものうちの何かに固有な説明規定でなく,固有の種や不可分の種に即してもいないような共通の説明規定を探求して,こうしたものを無視することは,馬鹿げている.
[414b28] 魂に関する事情も,形に関することと,ごく似通っている.というのも,形についても魂をもつものについても,つねに,先立つものが後続するもののうちに可能的に成立しているから.例えば四角形のうちには三角形が,感覚能力のうちには栄養摂取能力が〔成立しているのである〕.したがって,各々のものの魂は何であるか,例えば植物の魂や人間の魂,あるいは獣の魂は何であるかを,個別的に探求しなければならない.
[415b33] 後続するものに関して,いかなる原因ゆえに次のようであるのかを,探求しなければならない.植物においては,栄養摂取能力は感覚能力から離在している.他方で,触覚なしには他の諸感覚は何一つ成立しないが,触覚は他の諸感覚なしにも成立する.というのも,動物の多くは視覚も聴覚も匂いの感覚ももっていないから.そして,感覚しうる〔動物〕の或るものは場所的運動能力をもち,或るものはもたない.最後に,最も少数の動物が推論と思考をもつ.可滅的なものに属するこれらには推論が属し,これらの動物には残りの全て〔の能力〕も帰属するが,上述の諸能力の各々が帰属する動物の全てに推論が帰属するわけではなく,或るものには表象も帰属しないが,或るものには表象のみによって生きる.観照的知性については別の議論がある.そこで,これらの各々についての説明規定が,魂についてのもっとも固有な説明規定でもあることは明らかである.
要約
- [414b20] 魂の単一性は形の単一性と同様である〔同様の限定が必要である〕.
- i.e. 三角形,四角形……を超えた「形」なるものはなく,栄養摂取能力,感覚能力……を超えた「魂」なるものもない.
- 全ての形/全ての魂に共通の説明規定はありうるが,各々の固有の種を無視した探求は意味がない.
- [414b28] 魂と形は共通の構造を有する:
という系列があり,
は
のうちに可能的に成立している.
- i.e. 三角形,四角形……を超えた「形」なるものはなく,栄養摂取能力,感覚能力……を超えた「魂」なるものもない.
- [415b33] 問題: 以下の階層構造の原因は何か.
- 栄養摂取能力
触覚
他の感覚能力
場所運動能力 (
表象)
推論・思考.
- 観照的知性は別途要検討.
- 栄養摂取能力
先行研究
- S.: "... an instructive parallel may be found in the Politics, where Aristotle draws an analogous inference about citizens and governments (1275a33-b1), which he holds in a similar way to be arranged in a series (cf. EN 1096a19-35; EE 1218a1-8; Met. 999a6-10 for analogous claims in other arenas, usually advanced with an anti-Platonic purport). ... There is a sense in which a feudal serf of tsarist Russia and a capitalist entrepreneur living in Tokyo in the twenty-first century are both citizens––but we will not learn much about the political life of either without going on to provide content to what kind of soul we are considering".
- S.: 先行するものが後続するもののうちに「可能的にある」という主張は二通りに解釈できる: (i) n 角形のうちに (n-1) 角形を識別できる,(ii) (n-1) 角形の構成は n 角形の構成より少ない頂点しか必要でない.–– おそらく (ii) の仕方で解釈すべき (extensional / aggregative な説明だと解する必要はない).
- τὸ ὀρεκτικόν が rational な動物と non-rational な動物で異なる現れ方をすることも non-extensional な説明と噛み合う: higher-order faculties bleed into lower-order faculties, with the result that lower-order fuclties will be altered by their subordination to the higher.