『魂について』II.3 #1 魂の諸能力の階層 (再論)

DA II.3 414a29-415a19.


[414a29] 魂の諸能力のうち既に述べられたものは,或る生物にはその全てが帰属し,或る生物にはそれらの幾つかが属し,或る生物には一つの能力しか属さない.「諸能力」と我々が言うのは,栄養摂取能力,欲求能力,感覚能力,場所的運動能力,思考能力である.植物には栄養摂取能力のみが帰属し,他の生物には栄養摂取能力と感覚能力とが属する.感覚能力があるなら,欲求能力も属する.というのも,欲求とは欲望と気概と願望であるが,全ての動物は少なくとも諸感覚のうちの一つ,すなわち触覚をもっており,感覚が帰属するものには,快楽と苦痛と快いものと苦しいものとが属するのであり,こうしたものが属する生物には,欲望も属するからである.というのも,欲望とは快いものの欲求だから.

[414b6] さらに〔感覚をもつものは〕栄養の感覚ももつ.というのも,触覚とは栄養の感覚だから.というのも,乾いたものや湿ったもの,熱いものや冷たいものによって,全ての動物は栄養摂取するのであり,これらの感覚は触覚であるから.他の感覚されうるものは付帯的に〔触覚に〕属する.というのも,音も色も匂いも栄養摂取に全く寄与しないから.味は触れられうるものの一種である.飢えや渇きは欲望である.そして,飢えは乾いた熱いものの欲望,渇きは冷たく湿ったものの欲望である.味とはすなわち,これらの何らかの風味である.これらについては後ほど明らかにしなければならない.今は,次のことが語られたものとしよう.動物のうち触覚をもつものには欲求も帰属する.表象については明らかではなく,後ほど考察しなければならない.若干の動物には,これらに加えて,場所的運動能力も属する.他の動物にはーーすなわち人間には,およびもし何か他に,そのような,あるいはより尊ぶべきものが何かあるとすれば〔そうしたものにも〕––思考能力と知性が属する.

要約

  • 魂の能力をどこまで持つかは生物によって異なる.
    • 植物: 栄養摂取能力,
    • 動物:
      1. 栄養摂取能力 + 感覚能力−欲求能力,
      2. 栄養摂取能力 + 感覚能力−欲求能力 + 場所的運動能力,
      3. 栄養摂取能力 + 感覚能力−欲求能力 + 場所的運動能力 + 思考能力 + 知性 (人間など).
  • 感覚能力をもつものは欲求能力をもつ.
    • ∵ (P1) 感覚能力をもつものは快楽や苦痛をもつ.(P2) 快楽や苦痛をもつものは欲求をもつ.
  • 感覚能力をもつものは栄養の感覚をもつ.
    • ∵ (P3) 感覚能力をもつものは触覚をもつ.(P4) 触覚は栄養の感覚である.
      • P4 の根拠: (P5) 栄養摂取するのは熱いものや冷たいものである.(P6) 熱いものや冷たいものの感覚は触覚である.
  • 表象については後述する.

先行研究

  • 論理が飛躍していると見える箇所があり.議論を補うか結論を弱く解釈する必要がある.
    • 「感覚が帰属するものには快いもの・苦痛なものの感覚も帰属する」: Perception をもつものが perceive the pleasurable as pleasurable することの論拠は示されていない.アリストテレスは目的論的な議論に訴えうるかもしれない.
    • 「欲求をもつ」ことと「欲求能力 (faculty) をもつ」ことの間にもギャップがある.