『生成消滅論』I.9 原子論者による変化の説明の批判
GC I.9 (326b29-327a29). Crubellier が箇所ごとに詳解しているが,ちゃんと読めてない.GC の ποιεῖν / πάσχειν 論を見てみるのが目的だったので,とりあえずここで終わりにする.
[326b29] いかなる方式で,〈あるもの〉どもに,生み出すことや作用すること,作用を受けることが帰属するのかということを,何度も述べられた原理を把握しつつ,我々は語ろう.すなわち,或るものは可能的に,或るものは現実的にそうしたものであるのなら,或る部分では作用を受け,別の部分では作用を受けない自然本性をもつわけではなく,むしろそうしたものである限りで,あらゆる部分でそうしたものなのであり,より少なく・より多くそうしたものである限りで,より多く・より少なく〔作用を受けるもので〕ある.そして,むしろこの仕方であれば,または,鉱山のなかに作用を被りうるものの連続的な脈が伸びているようにであれば,ひとは通り道を語りうる.
[327a1] さて,本性上まとまっており単一である各々のものは非受動である.それら自身にも,本性上作用し作用を受ける他のものどもにも触れないものも同様である.〔「本性上作用し作用を受ける」と〕私が言うのは,例えば,火は本性上,触れるときだけではなく,遠くにあるようなときにも熱するということである.というのも,火は空気を熱する一方,空気は物体を熱するが,〔空気は〕本性上作用し作用を受ける自然本性を有してそうするのである.
[327a6] 或る部分で作用を受け或る部分では作用を受けないと考えることは,冒頭に規定したが,次のように語るべきである.すなわち,大きさがあらゆる部分で可分ではなく,むしろ不可分な物体または幅があるなら,あらゆる部分で作用を被りうるわけではないだろうが,しかし何ものも連続的ではないだろう.このことが偽であり,物体全体が可分であるなら,分割されているが接触しているということは,可分であることと,何ら相違しない.というのも,或る人々が主張するように接触に応じて分割しうるのであれば,未だ分離されていなくても,分離されるだろう.というのも,分割されることが可能だから.というのも,いかなる不可能なことも生じないから.
[327a14] 総じて,この方式でのみ,諸物体が分かたれて,〔作用を被ることが〕生じるというのは奇妙である.この議論は性質変化を棄却しているが,同一の物体が連続的でありつつ,或る時は液状であり或る時は固体状であり,分割や複合によってこの作用を受けたわけではなく,デモクリトスが述べるような回転や相互接触によってでもない,ということを,我々は目にするから.というのも,自然本性の点で配列が変わったり,位置が変わったりすることなしに液状から固体状になるのではなく,また塊が実際に固くて固まっている不可分なものであるわけでもない.むしろ,全てが一様に液状であり,ある時は固くて固まっているのだ.さらに,増大と減退も可能ではない.というのも,付加があり,かつ全体が−−何かが混合して,あるいはそれ自体として変化することで−−変化しているのでない限りで,何であれ何かが大きくなることはないだろうから.
[327a25] さて,生み出すことや作用することや生じることや互いから作用を受けることが,いかなる仕方であってよく,またいかなる仕方で−−あってよいと或る人々は主張するものの−−あってはならないか,ということは,この仕方で規定されたものとしよう.
要約
- 〈あるもの〉
が可能的に
であること/現実的に
であることは,
の一部が受動的で一部が非受動であることから説明されはしない.むしろ
の全体が可能的/現実的に
である.
- 本性上一まとまりのものや,作用の主体・客体となるものに触れないものは,非受動である.
- 反対に,「
の一部が作用を受け一部が作用を受けない」という想定からは,以下のジレンマが生じる.
- また,原子論的な説明からは性質変化や量的変化も説明できない.
訳注
- 「或る部分」「あらゆる部分」: 'The formula τῇ μὲν τῇ δ' οὐ does not refer to any spatial repartition of the susceptibility or of the process of affection, but must apply to the ultimate parts of a body. That is why Aristotle will affirm later that this thesis can only be upheld within a discontinuist conception of matter (27a7-9).' (Crubellier, 275)
- 「鉱山」: Cf. Crubellier 275f.