GC I.8 325b12-33.
[325b12] さて,或るものどもが作用し或るものどもが作用を受ける,以上の諸方式が語られている.そしてこれらの人々については,彼らがどのように語っているかということも明らかであり,彼らが用いている彼らの措定に対してほぼ合致する仕方で帰結していると思われる.一方,他の人々についてはそれほどでもない.例えば,エンペドクレスにとって消滅と性質変化がいかなる仕方であっただろうか,ということは明らかではない.というのも,前者の人々にとっては,物体のうち第一のものどもは分割不可能であり,形の点でのみ異なるのであって,〔物体は〕これら第一のものどもから複合され,これら最後のものへと分解されるのだが,他方エンペドクレスにとっては,その他の〔第一の基本要素でない〕ものどもが基本要素に至るまで生成し消滅するということは明らかだが,これらの基本要素そのものの積み重なった大きさがいかにして生成し消滅するのかは,明らかではなく,かつ,プラトンが『ティマイオス』で書いたように,「火にも基本要素があり,他の全てのものどもも同様である」と語ってはいないエンペドクレスが,それを述べることは許されないのだ.
[325b25] というのも,レウキッポスと同じ仕方で語っていないということと,以下の限りで異なっているからだ.すなわち,一方のレウキッポスは「不可分なものは立体である」と言い,他方のプラトンは「平面である」と言うこと,および一方のレウキッポスは不可分な諸立体の各々を無限の形状によって規定し,他方のプラトンは限られた諸形状によって規定している––両者とも,少なくとも不可分であり,形状によって規定されていると語っているから.実際これらから生成と分離があるのであり,一方でレウキッポスにとっては二つの仕方で––空虚と接触を通じて––あるのだろうし (というのもこの仕方で各々は分割されているから),他方でプラトンにとっては接触にもとづいてのみあるのだ.というのも,空虚はありはしないと彼は語っているから.
要約
- 作用と受動に関して,原子論者の説は理解可能だが,エンペドクレスの説はそうでもない.
- エンペドクレスの説は,基本要素の生成消滅を説明できないから.
- レウキッポスとプラトンの違い.
訳注
- "τοσοῦτον γὰρ διαφέρει τοῦ μὴ τὸν αὐτὸν τρόπον Λευκίππῳ λέγειν, ὅτι ..." という表現の意味が取れない.
- 素直に読めば τοσοῦτον は副詞,τοῦ ... λέγειν が διαφέρει の間接目的語で,Λευκίππῳ は τὸν αὐτὸν に係るように見えるけれど,そのまま訳すと上記の意味不明な訳文になってしまう.
- 既訳は以下の通り: "This account (of Plato's) is to this extent different from that given by Leucippus, that ..." (Williams), "Car les seuls points de divergence entre Platon et ce que professe Leucippe, c'est que ..." (Rashed). とりあえずこの線で理解するが,なぜこう訳せるのか分からない.
- また γάρ の意味も不明.(Cf. Hussey, p.261: "The notable 'sandwich-like' structure of the chapter has already been mentioned. So have the awkward abrupt transitions at 325b12-24.")