『生成消滅論』I.7 作用と運動の並行性.第一の作用者

GC I.7 324a24ff.

[324a24] 作用することと作用を受けることについては,運動することと運動させることについてと同じ説明規定を把握しなければならない.すなわち,運動させるものも二通りに語られるのだ.というのも,運動の始点がそのうちにあるものは,運動させると思われており (というのも,諸原因のうちの第一の始点であるから),またその一方で,終端にあるものが,運動するものと生成に対して〔運動させる〕と思われているから.作用するものについても同様である.医者も酒も健康にすると我々は述べるから.

[324a30] さて,運動において第一に運動させるものが不動であることを,何ものも妨げはしない.作用については,第一のものが非受動であり,終端にあるものは自ら作用を被るものでもある.というのも,同一の質料をもたない限りのものは,例えば医術のように,非受動でありつつ作用するから.というのも,医術は〔患者を〕健康にしながら,健康にされる人から何らの作用も被らないが,食物は作用しつつ自ら何か作用を被るから.というのも,作用しつつ,熱されるか,冷やされるか,他の何かを同時に被るから.医術は始点としてあり,食物は終端であって接触するものである.

[324b4] さて,質料のうちにないもの限りのものは,能動的なもののうち非受動的なものであり,質料のうちにあるものは,受動的なものである.というのも,一方で,対立するものどものいずれにも,あたかも類のように,同様の仕方でいわば同一の質料があると我々は言い,他方で,熱いものでありうるものは,熱しうるものが現にあり,近くにある場合には,熱されることが必然であるとも言うから.それゆえに,上述の通り,能動的なものどものうち,或るものは非受動的であり,或るものは受動的である.また運動の場合と同様に,能動的なものどもについても同じ方式が成り立つ.というのも,あちらでは運動させる第一のものは不動であり,能動的なものどもの場合,作用する第一のものは不受動だから.

[324b13] 能動的なものは運動の始点がそこから来るようなものとしての原因である.〈それのためのそれ〉は能動的ではない.それゆえ健康は,メタファーに即してでなければ,能動的ではない.というのも,作用するものには,それがある限りで,作用を受ける何らかのものが生じるが,性向が現にあるときには,もはや生じず,むしろ既にあるのだ.形相ないし目的は或る性向であり,質料は質料としては受動的である.

[324b18] さて,火は質料において熱をもつ.何らかの熱が離在するなら,これはもはや作用を受けない.さて,これが離在することはもしかすると不可能であるかもしれない.若干のものがそうしたものであれば,それらについては,我々が述べたことは真であろう.作用することと作用を受けることが何であり,何に,何ゆえに,どのように帰属するのかは,この仕方で規定されたものとしよう.

要約

  • 運動と作用は次の共通構造を有する: F → ... → L → P.
    • →: 作用 / 運動,F: 第一の作用者 / 運動させるもの,L: 終端の作用者 / 運動させるもの,P: 受動者 / 運動するもの.
  • F は非受動 / 不動.L は受動的 / 運動するものであり,また P と接触するもの.
  • F は質料のうちにない.L は質料のうちにある.
  • 能動的なもの = 始動因.目的因は能動的ではない.
  • 以上の議論は,能動的なものが離在する限りで成り立つ.

訳注

  • 簡単にするため,引きつづき ποιητικόν / παθητικόν を「能動的 / 受動的」と訳すが,両者が排他的分類のように見えかねない憾みがある.b5, 9-10 に見られるように,そうではなく,単に「作用しうる / 作用を被りうる」という意味だろう.

先行研究

  • Wildberg:「質的作用についておいても運動全般と同様に第一作用者がある」というのがポイント.一見反例になりそうな質的変化についても Phys. III の論点が成り立つ.
    • 性質変化の corporeal / incorporeal agents を区別する限りで,affected / unaffected agents の区別が可能になる.
    • 質料が「同一である」とは種類に関する同一性 (identity-in-kind) を指す: 甘さや辛さは元素に帰属するわけではない.
  • Wildberg: The prime mover が final cause たるか否か問題が Λ との関係で問題になる.Cf. Broadie (1993), Judson (1994), 165, Laks (2000).
    • 第一作用者についての積極的特徴付け,および第一動者との関連付けは,ここでも他の箇所でも明示的にはなされない.
    • 第一作用者が非質料的だという主張は問題含みであり,b4 の「質料のうちにない」はむしろ単に「同一の質料のうちにない」を意味するのかもしれない (↔︎ Williams).