『生成消滅論』I.7 作用者と受動者は互いに似たものか

GC I.7 323b1-29. Symposium の 7章担当者は Wildberg. 気づき: ずっと Joachim (1922) のテクストを使ってきているが,今なら Rashed (2005) で読むべきかもしれない.

[323b1] つづいて,作用することと作用を受けることについて述べねばならない.以前の議論から,互いと対立する議論を我々は受け入れている.というのも,一方で多くの人々は一致してともあれ次のように述べているのだ.すなわち,「似たものは全て似たものによっては非受動的であり,それは一方が他方よりいっそう能動的だったり受動的だったりしないからだが (というのも,同じものどもは全て同様に,似たものどもであるから),他方で似ていないものども,すなわち異なっているものどもが,本性上,互いに作用し,作用を被るのだ」.というのも,「より少ない火がより多い火によって消滅するときにも,反対者によってこれを被るのだ.なぜなら多いものは少ないものの反対だから」と人々は主張するから.

[323b10] 他方,デモクリトスのみが,他の人々と比べて独自な仕方で語っている.というのも,彼はこう主張しているのだ.「作用するものと作用を受けるものは同一であり類似している.というのも,他なる,異なったものどもは,互いから被ることがあってはならないから」.むしろ,他なるものどもが互いに何らか作用するとしても,他なるものとしてではなく,むしろ何か同一であるものとしてであり,その点で作用することがこれら他なるものどもに付帯するのだ.

[323b15] それゆえ,以上が語られていることであり,この方式で語っている人々は,対立することを語っているように思われるかもしれない.だが議論の対立の原因は,両者の各々が,或る全体を考察すべきであるところ,或る部分を語ってしまっていることである.というのも,似たもの,すなわちあらゆる点で全く違いのないものが,似たものによって決して作用を受けないということは,理にかなっているのであり (というのも,どうして一方が他方より能動的であるだろうか? また似たものによって何かを被ることが可能であるなら,自らも自らによって何かを被るだろう.しかし,これらがそのようであれば,何一つ不滅でも不動でもありえない.というのも,万物がそれ自身でそれ自身を運動させるだろうから),また完全に他なるものや,いかなる点でも同一でないものも同様である.というのも,白さが文字によって,あるいは文字が白さによって作用を受けることは,何らか付帯的にでなければ––例えば付帯的に文字が白かったり黒かったりするように––,ありえないから.というのも,反対でもなく,反対のものからなるのでもない限りのものどもは,それら自身を自然から追い出さないから.

要約

  • 「作用はいかなるものの間にあるか」につき,意見の対立が見られる.
    • (T) 似ていないもの・異なったものどうしの間にのみ作用がある (多数派).
      • 一見似たもの同士の作用も,或る点では反対である.
    • (AT) 同一・類似のものどうしの間にのみ作用がある (デモクリトス).
      • 他なるもの同士の作用も,何らか同一である限りにおいてある.
  • 対立の原因は,両者とも考察が部分的であること.
    • ¬AT: たしかに,全く違いのないものの間に,作用はない.
      • 一方がより能動的であることはない.
      • 同一のものから受動しうるなら,自己受動が可能になる.すると,不動のものはありえなくなる.
    • ¬T: いかなる点でも同一でないものの間に,作用はない.
      • それらは反対者ではなく,反対者から構成されてもいないので,付帯的にしか作用しない.

先行研究

  • Joachim: デモクリトスだけというのは変.エンペドクレスも言及されてよい (cf. De An.).
  • Joachim: οὐκ ἐξίστησι γὰρ ἑαυτά (i.q. ἄλληλα). また Philoponus rightly interprets ὅσα ἐξ ἐναντίων ἐστίν as τὰ μεταξύ.
  • Wildberg, 222f.: [The terms 'action' and 'passion'] carry a strong anthropocentric connotation of human activity and emotion. ... But the purpose of these and other examples is merely to help us better to grasp the mechanisms of qualitative physical processes at levels that lie beyond the domain of what is accessible to the senses. ... I shall, for the reasons indicated, try to turn down the unwanted overtones by speaking simply of (qualitative) 'affection'.
  • Wildberg: (T) も (AT) も作用の必要条件しか述べていない.
  • Wildberg: デモクリトスに関する報告はテオフラストス断片に裏付けられる.
  • Wildberg: 後世の文献に見られる ὑπεναντία をここに読み込むことも可能かもしれない: 網羅的かつ非排他的な選言.
  • Wildberg: b15-29 は,意見を支持する論拠としては弱く (cf. Williams),歴史的説明としても成り立っていない.おそらく問題の dialectical な精緻化を企図したものであろう.