『カテゴリー論』8章 #2 自然本性に即して語られる性質,受動的性質

Cat. 9a14-9b5.

[9a14] 性質のもう一つの類は,我々がそれに即して,拳闘に優れるとか,足が速いとか,健康的であるとか,病弱であると語るもの,すなわち,端的に自然本性上の能力ないし無能力に即して語られる限りのものである.というのも,何らかの状態にあることによって,こうしたものどもの各々であると語られるのではなく,むしろ,何かを容易になすとか,決して被らないという自然本性上の能力をもつということによって,語られるのである.例えば,拳闘に優れるとか,足が速いと語られるのは,何らかの状態にあることによってではなく,むしろ,何かを容易になすという自然本性上の能力をもつということによってであり,健康的であると語られるのは,偶然的な事柄によって容易に被ることが決してないという自然本性上の能力をもつことによってであり,病弱であると語られるのは,偶然的な事柄によって容易に被ることが決してないことについて自然本性上の無能力をもつことによってである.「固い」や「柔らかい」もこれらと同様である.というのも,固いと語られるのは,容易に分割されないという能力をもつことによってであり,柔らかいと語られるのは,同じこのことについて無能力をもつことによってである.

[9a29] 性質の第三の類は,受動的な性質と受動状態である.こうしたものどもは,例えば甘さ,苦さ,酸っぱさ,およびこれらと同類のもの全て,さらに熱さ,冷たさ,白さ,黒さである.さて,これらが性質であることは明らかである.というのも,これらに即して,受容しているものどもがどのようであるかが語られるからである.例えば蜜は甘さを受け入れていることによって甘いと語られるのであり,物体は白さを受け入れていることによって白いと語られるのである.他のことどもについても同様である.

[9a36] 受動的な性質であると語られるのは,受容しているものども自体が,何らかの仕方で諸性質を受動していることによってではない.というのも,蜜は何かを受動していることによって甘いと語られるのではなく,他のそうしたものどものうち何もそうではないから.これらと同様に,熱さや冷たさが受動的性質であると語られるのも,受容するものそれ自体が何かを被っているからではなく,上述の諸性質の各々が,感覚に即して受動状態を作るものであることによって,受動的性質であると語られるのである.というのも,甘さは味覚に即して何らかの受動状態をうちに作り,熱さは触覚に即してそうである.他の諸々の性質も同様である.

要約

「性向/状態」という第一の類 (ただし原文は εἶδος) に続いて,さらに二つの類が挙げられる.

  • 「自然本性上の能力ないし無能力に即して語られる」性質.
    • 例: 拳闘に優れる,足が速い,健康的,病弱.
    • i.e. 何かを容易になす/全く被らないという自然的能力をもつ/もたないこと.
  • 受動的性質.
    • 例: 味覚的性質,熱さ/冷たさ,色.
    • i.e. 受動状態を生み出すもの.(性質をもつ・受容しているものが何かを受動しているから「受動的性質」なのではない.)

訳注

9a31 'μελανία' が Bodéüs 版では μαλανία (sic) となっているが,意味をなさない.特に校注もなく,単なる誤植だろう.