バルザック (2012)『サラジーヌ 他三篇』

「サラジーヌ」(1830)「ファチーノ・カーネ」(1836)「ピエール・グラスー」(1839)「ボエームのプリンス」(1839-45) の四作を収める.

生と死,若さと老い,女と男,過去と現在,イタリアとフランス……という幾重にも重畳された対立項がひとりの人物へと一挙に収斂する表題作がとりわけ深い印象を残した.またラ・パルフェリーヌ伯爵の周りの数奇な人間模様を描いていっそう複雑な入れ子構造をなす物語に仕立てた「ボエームの王」もすばらしい.