『メタフュシカ』B5 幾何学的対象と物体のどちらが本質存在か

Met. B5 1001b26-1002b11 (Aporia 12).

[1001b26] 以上のことどもに引き続くアポリアーは,諸々の数,物体,平面,点は,何らかの本質存在であるのか否かということである.それというのも,もし本質存在でないとすれば,〈あるもの〉とは何であるか,また〈あるもの〉どもの本質存在とは何であるか〔という問題〕が生き残るからである.というのも,諸々の属性,運動,関係〔「何かに対して」〕,状態,比率は,何かの本質存在を意味表示するとは思われないが (というのも,〔これら〕全ては何らかの基礎に置かれるものに関して語られるのであって,どれも〈或るこれ〉ではないから),一方で,本質存在をこの上なく意味表示していると思われるだろうものども,すなわち水や土,火,空気に−−それらから複合的な諸物体が構成されているのだが−−,熱さや冷たさやそうした種類の諸属性が属するのであって,これらは本質存在ではなく,これらを被る物体のみが,或るものであり或る本質存在であるものとして留まるのである.

[1002a4] だが実際,少なくとも物体は表面ほど本質存在ではなく,表面は線ほど,線は単位や点ほど本質存在ではない.というのも,これらによって物体は境界づけられるのであって,「これらは物体なしにもあってよいが,その一方で,物体がこれらなしにあることは不可能だ」と思われているからである.まさにそれゆえに,多くの人々や先行する人々が「物体が本質存在であり〈あるもの〉であって,他のものどもはその属性であり,したがって諸物体の諸原理も〈あるもの〉どもの諸原理である」と考えていた一方で,後代の人々や,そのうちより賢い人々は,「〔〈あるもの〉どもの諸原理は〕諸々の数である」と思った.それゆえ,我々が上述した通り,もしこれらが本質存在でないなら,全く何も本質存在ではなく,何も〈あるもの〉ではないのだ.それというのも,少なくともこれらに付帯的する事柄を〈あるもの〉どもであると呼ぶことは適切ではないから.

[1002a15] だが実際,もし次のことが同意されたなら−−すなわち,長さや点が物体よりいっそう本質存在であり,それらがどのような物体に属しうるのかが我々に見えないとすれば (というのも,感覚可能なもののうちにあることは不可能であるから)––,いかなる本質存在もありえないだろう.

[1002a18] さらに,これら全てが物体の分割であると思われる––一つは幅への,一つは深さへの,一つは長さへの.これらに加えて,立体に内在する形は何であれ同様である.したがって,石のうちにヘルメースがあるわけでもないとすれば,立方体のうちに立方体の半分が境界づけられたものとしてあるわけでもない.それゆえ表面もそうではなく (というのも,どのような表面があろうと,半分を境界づけるこの表面もあることになろうから),線や点や単位についても同じ議論があり,したがって,もし物体がこの上なく本質存在であり,これらは物体よりいっそう〔本質存在であり〕,これらがあるわけでもなく,何らかの本質存在であるわけでもないなら,〈あるもの〉とは何であり,〈あるもの〉どもの本質存在とは何であるか〔という問題〕が生き残る.つまり,上述の事柄に加えて,生成と消滅に関する不合理なことどもが帰結する.というのも一方で,もし以前にありはしなかったが今ある,ないしは以前にあったが今はありはしないとすれば,生成することや消滅することに伴って,本質存在はこれらを被ると思われるが,他方で点や線や面は,或る時にあり,或る時にはありはしないというようにして,生成することも消滅することもあってはならない.というのも,諸物体が接触し,あるいは分割されるときには,同時に,或る時には物体が接触して一つの表面になり,或る時には物体が分割されて二つの表面になる.したがって,物体が一緒に置かれるとき,表面はあるわけでもなく,むしろ消滅しており,また物体が分割されることで以前ありはしなかった表面があるのである (というのも,少なくとも分割不可能な点が二つに分割されるのではないから).またもし生成し消滅するのだとすれば,何から生成するのか,ということは,時間における今をめぐっても類似している.というのも,これが生成することも消滅することもあってはならないが,それでもやはり,何らかの本質存在であるわけであることなしに,つねに異なると思われるから.点や線や表面をめぐっても同様であることは明らかである.というのも,同じ議論があるから.というのも,全て同様に限界または分割であるから.

要約

  • 問題: 数,物体,平面,点は本質存在か,そうではないか.
  • (T) 物体 (ないし元素) が本質存在である.
    • (T1) 物体は属性・運動等々の基礎に置かれ,それらを被りつつ,本質存在として留まる.
  • (AT) 単位や点 > 線 > 表面は物体よりいっそう本質存在である.
    • (AT1) 物体はこれらなしにはありえないが,これらは物体なしにもありうる.
    • (AT2) 実際,より賢い学者たちは「原理は数である」とした.
  • (T2) 長さや点がいっそう本質存在であり,かつそれらの物体への帰属が感覚可能でないなら,本質存在はありえない.
  • (T3) そもそも長さや点は物体の分割にすぎない.
  • (T4) 線や点は生成・消滅しない.