『メタフュシカ』Γ2 1004a9-31 第一哲学の対象領域の画定

Met. Γ2 1004a9-31.

[1004a9] 単一の学知に対立するものどもを観照することが属し,〈一〉に〈多〉が対立するのであれば (否定と欠如とを観照することは,両者とも否定ないし欠如がそれの欠如であるところの一つのものを観照することであるゆえに––それがそれ〔=一つのもの〕に帰属しないと端的に語られる欠如であれ,何らかの類に帰属しないと語られる欠如であれ––単一の学知に属する.それゆえ一方そこでは〔=後者の場合には〕,一つのものに関して,否定のうちなるもののそばに,種差が加えられるのだが−−というのも,それ〔=一つのもの〕の否定は不在であるから−−,他方で欠如においては,欠如がそれに関して語られるところの,基礎に置かれる或る自然本性が生じるのである),〔話を戻すと〕〈一〉に〈多〉が対立するのであり,したがって,上述の事柄に対立するものども−−〈他〉〈非類似〉〈不等〉や,その他,これらに即して,または〈多〉と〈一〉に即して語られる限りのものども−−を認識することも,上述の学知に属する.反対性もこれら〔対立するものども〕に属する或る一つのものである.というのも反対性は或る種差であり,種差は他性であるから.したがって,〈一〉は多様に語られるのだから,これら〔対立するものども〕も多様に語られるのであろうが,一方で〔それら〕全てを認識することは,同様に一つの学知に属する.というのも,多様に〔語られるの〕だとしても,異なる〔学知に属する〕のではなく,むしろ,諸々の説明規定が,一つのものに即して参照するのでも,一つのものに対して参照するのでもない場合に,異なる〔学知に属する〕のである.

[1004a25] 全てのものが第一のものへと辿られるのなら (例えば第一の〈一〉に対して語られる限りのものどものように),〈同〉〈他〉や反対者についても同様であると言わねばならない.したがって,各々がどれだけの仕方で語られるのかが区別されてから,各々の述定のうちの第一のものに対して,いかにして〔各々が〕その〔第一のもの〕に対して語られるのかということを,そのように説明しなければならない.というのも,或るものどもはその〔第一のもの〕を有することで,或るものどもはつくることで,或るものどもは他のそうした仕方で,語られるから.

要約

  • 〈一〉と〈多〉は対立者なので,単一の学知が観照する.
    • 対立のうち,否定と (端的な/類に相対的な) 欠如は単一の学知が観照する..
  • したがって,その他の対立者も同じ学知が観照する:
    • 〔〈同〉〈類似〉〈等〉と対立する〕〈他〉〈非類似〉〈不等〉etc.
      • 反対性も或る一つのもの〔同一の学知の考察対象〕である (種差であり,種差は〈他〉だから).
  • 〈一〉に対応して,それらの対立者も多様に語られる.
  • 対立者が語られる諸方式が区別された後,それらと第一のものとの関係を説明する必要がある.

先行研究

a10-16 についての CN の議論が未消化.特に,結局 a12-13 をどう読んでいるのか,いまいちつかめない.

  • CN: 対立の諸種のうち (cf. Cat. 10) 関係,欠如,否定は既に語られている.単一の学知が扱いうる範囲として極大のものである反対者の吟味が最後に残されている.
    • Ross: Cf. διαφορὰ τέλειος (Met. I).
  • CN: 欠如の分類: Cf. 人の盲目性とモグラの盲目性 (Δ22).
    • 前者が端的に語られる欠如,後者が類に関する欠如.
    • 否定が単なる述定の不適用であるのに対し (e.g. 神は見ない),欠如は何らかの肯定に基礎を置く.
  • CN: 1004a20 で EJ の読みを採る.〔従うが,ギリシア語としてはけっこう読みにくい.まあ lectio difficilior か.〕