『ポリテイア』II 357a1-358a6 グラウコンの問題提起

Resp. II 357a1-358a6.

[357a1] 私はこれらのことどもを述べて,議論から逃れおおせたと思っていた.しかし本当のところ,どうやらこれは序曲であったようだ.というのも,いつでもあらゆることに対して勇敢なグラウコンが,このときにも,トラシュマコスが断念したのを良しとせずに,こう言ったのだ.「ソクラテスよ,あなたは,「あらゆる点で正義は不正より優れている」ということに,私たちが説得されたと思うことを望んでいるのですか,それとも本当に説得されることを望んでいるのですか?」「私は本当に説得することを望んでいるよ,できることなら」と私は言った.

[357b4]「そうだとすれば」とグラウコンが言った,「あなたが望んでいることを,あなたはしていませんよ.だって,私に言ってください,いったいあなたには,何か次のような種類のものが善だと思われはしませんか−−すなわち,様々な結果を願ってではなく,むしろそれをそれ自身のために歓迎して,持つことを私たちが選ぶようなものを.例えば,喜ぶことや,また無害である限りの諸々の快楽,つまり後々になって,それらを有する際の喜び以外の何も,それらのゆえに生じない限りの諸々の快楽のことですが」.「私にはそうした何かが善だと思われる」と私は言った.

[357c2]「では,それ自体のために,またそれから生じるものどものために,我々が愛するようなものは,どうでしょう−−例えば再び,思慮することや,見ること,健康であることのように? というのも,おそらくこうしたものを,両者のゆえに,我々は歓迎するのですから」.「そうだ」と私は言った.

[357c6]「善の第三の種類にあなたは気づかれるでしょうか」とグラウコンは言った,「それは,そのうちに,身体を鍛えることや,病気のときに治療を受けることや,医療やその他の稼業があるものです.それというのも,これらは辛い一方で我々の利益になるのだと我々は言うでしょうし,またこれらを我々は,各々のために持つことを選ぶのではなく,報酬やその他それらから生じる限りのものどものために持つことを選ぶのです.」「本当にその通りだ」と私は言った,「そしてそれが第三のものだ.それで?」

[357d4] 「あなたはこれらのうちどの種類に,正義を措定しますか?」と彼は言った.「私が思うには,最も立派なもののうちにある.つまり,それ自身のゆえにも,それから生じるものどものゆえにも,幸福でありたいと望む者が愛さなければならないものだ」と私は言った.

[358a4] 「ところが」と彼は言った,「多くの人々にはそう思われておらず,むしろ辛い種類に属すると思われているのです,つまり報酬のため,また世評による名声のために追求しなければならないのであって,それ自体のゆえには苦しいから避けなければならないものに属すると」.

要約

トラシュマコスとの議論を終えたソクラテスに,グラウコンは「説得が十分でない」と指摘する.まず彼は,善を三つの種類に分類する.

  1. 専らそれら自身のために我々が選好するもの (e.g. 喜ぶこと,無害な快楽).
  2. それら自身のためにも,それらの結果のためにも我々が選好するもの (e.g. 思慮する,見る,健康である).
  3. 専らそれらの結果のために我々が選好するもの (e.g. 鍛錬,治療,稼業).

そして「正義」はどれに入るか,と問う.ソクラテスは「最も立派な」(2) に当てはまるとするが,グラウコンは,しかし一般には (3) だと考えられている,と指摘する.

先行研究

Adam しか見てない.

  • a2 ἦν ἄρα: 'was after all'.
  • b8 ἔχοντα: sc. αὐτάς, not the idiomatic 'to continue rejoicing' (as Campbell suggests).