『自然学』II 9 条件的必然性

Phys. II 9, 199b33-200a24.


[199b33] 必然的な事柄は,仮定からあるのだろうか,それとも端的にもあるのだろうか? というのも,「重いものは下に,軽いものは上に本性上運ばれるのであり,それゆえに石つまり礎材は下に運ばれ,土は軽さゆえに上に運ばれるのであって,木材はもっとも上に運ばれる.というのも最も軽いから.そうした理由で,壁は必然的に生成したのだ」と考える場合のような仕方で,必然的な事柄が生成のうちにあると人々は考えているからだ.だが,こうしたことなしには同じように生成していなかったにしても,これらのことゆえに生成するのではない––「質料ゆえに」としてでなければ.むしろ,何かのために生成したのである.例えば,何のゆえに鋸はこのようであるのか? これこれの仕方であり,これこれのためにあるからである.しかし,鉄でなければ,この〈そのためにあるそれ〉は生成し得なかった.したがって,鋸があり,その働きがあるだろうとすれば,鉄器であることは必然である.まさに仮定から〔鋸が鉄製であるという〕必然的な事柄はあるのであって,目的としてあるのではない.というのも,必然的な事柄は質料のうちにあり,一方〈そのためにあるそれ〉は説明規定のうちにあるから.

[200a15] 必然的な事柄は,数学的諸学のうちにも,自然本性に従って生成する事柄のうちにも,何らか似た仕方である.というのも,〈直〉とはこれこれであるのだから,三角形が等しい二直角を有することは必然である.だが,後者が成り立つとき,前者が成り立つわけではない.しかし,後者があらぬとすれば,〈直〉もあらぬだろう.だが生成する事柄においては反対であって,目的があるだろう,ないしはあるとき,先行する事柄もあるだろう,ないしはあるのである.もし〔先行する事柄が〕ありはしないとすれば,ちょうどそこに終端がないとき始まりもないように,目的すなわち〈それのためにあるそれ〉も〔ないだろう〕.というのも,この目的とは (行為ではなく,推論の) 始まりであるから.

要約

  • 問い: 自然的事物における必然は,(i) 仮定からする必然か,(ii) 端的な必然か.
    • 先行学説は,「X から必然的に G になる」という X によって G の生成を説明してきた.
      • だが,こうした説明は不十分である (類比的事例: G = 壁,X = 建材の物理的性質).
    • むしろ,G の目的 T (仮定,説明規定) が,質料 X を必然的に制約する.
  • 目的と質料の関係は,数学における前提命題と結論の関係に似ている.
    • もっとも,自然的事物においては関係が逆転する: 目的 (終端) が先行する事柄の充分条件となる.