『自然学』II 4 #2 偶然に関する先行学説の列挙 (続き)

Phys. II 4 196a24ff.


[196a24] 自発的な事柄をこの天界や宇宙全体の原因とする人々もいる.「というのも,渦動,すなわち分離しており万有をこの秩序へともたらした運動は,自発的に生じたのだ」〔と彼らは述べる〕.そしてこのこと自体,いっそう驚くに値する.というのも,動物や植物は偶然にあるのでも偶然に生じているのでもなく,むしろ〔その〕原因は自然本性か知性か他のそうした何かであると語りつつ (というのも,種の各々から何か偶然的なものが生じるわけではなく,むしろこれこれのような種からオリーブが生じ,これこれのような種から人間が生じるのだから),天界すなわち目に見えるもののうち最も神的なものどもは自発的に生じるのであり,動物や植物の原因のごとき原因はありはしないと主張しているのだから.しかしながら,そうだとすれば,それ自体注意を払うのがふさわしいのであり,それについて何かを述べるのが立派なことだろう.というのも,他の点でも奇妙であることに加え,さらには,天界においては何も自発的に生成しないのに対し,偶然的でない〔はずの〕事柄においては,多くのものが偶然的に生じるのだということを見ながら〔上述のことを〕語っているのは,いっそう奇妙である.むしろ反対のことが生じているというのがありそうなことであった.

[196b5] 偶然は原因であるが,何らか神的で驚異的であるために,人間の思考には明瞭でない,と思っている人々もいる.したがって,〔偶然と自発的な事柄の〕各々が何であるかを探求しなければならないし,自発的な事柄と偶然が同一であるか異なるのか,また既に規定された諸原因にどのように当てはまるのかを探求しなければならない.

要約

  • 「万有を秩序づける運動は自発的であった」という説もある〔デモクリトス〕.
    • 敷衍すると: 動植物は自然本性・知性などの原因を有するが,天界にはそうした原因はない.
    • 反論 (の一つ): 観察事実からすると逆で,天界では自発的生成は見られない.
  • 「偶然は原因だが,神的であるため人間には認識しがたい」という説もある.
  • こうした見解の相違ゆえに,4章冒頭で挙げた問題を探求する必要がある.