『メタフュシカ』E1 #1 学知一般と自然学とを特徴づける

Metaph. E1, 1025b3-1026a6.


[1025b3] 〈あるもの〉どもの諸原理と諸原因が探求されるのであり,明らかに,〈あるもの〉である限りの〔〈あるもの〉が探求されるのである〕。というのも,何かが健康と強健の原因であり,数学的な事柄にも原理や構成要素や原因があり,総じて全ての思考的学知,または何らかの仕方で思考に与っている学知は,比較的厳密な仕方であれ,より単純な仕方であれ,原因や原理をめぐってある。だがこれらの学知は全て,何らかの〈あるもの〉や何らかの類との関係において区切られており,それをめぐって取り組まれるのであって,端的に〈あるもの〉をめぐってでも,〈あるもの〉である限りの〈あるもの〉をめぐってでもなく,またいかなる〈何であるか〉の説明規定もなさず,むしろ〈何であるか〉の説明規定から,或る諸学知は感覚の点で自ずから明らかであるとし,他の諸学知は〈何であるか〉を基礎措定として把握するのであり,かくして,それ自体として付帯するものどもを,〔諸学知が〕それをめぐってあるところの類について,比較的に効力ある仕方であれ,より緩い仕方であれ,論証するのである。まさにそのことのゆえに,こうした帰納から,本質存在の論証や〈何であるか〉の論証があるのではなく,むしろ何かほかの解明の方法があることは明らかである。同様にして,それについて取り組むところの類があるかあらぬかということも,これら諸学知は何ら述べないが,それは,同一の思考が〈何であるか〉と〈あるかどうか〉を明らかにするゆえである。

[1025b18] 自然的学知も〈あるもの〉の或る類についてのものになっているのだが (というのも,運動と静止の原理をそのうちに含むような本質存在についてあるから),実践的でも,製作的でもないことは明らかであり (というのも,一方で製作的な事柄の原理は製作者のうちにあり,それは知性か技術か何らかの能力であるが,他方で実践的な事柄の〔原理〕は行為する人のうちにあり,それは選択であるから。というのも,為しうる事柄と選択しうる事柄は同一であるから),したがって,全ての思考が,実践的か,製作的か,観照的かであるなら,自然学は何らか観照的であるだろうが,しかし運動可能であるようなものについて観照的であるのであり,また大抵の場合に説明規定に即している,単に離在しないものとしての実体について観照的である。

[1025b28] 〈それであるとは何であったか〉と〈どのようであるか〉の説明規定とを見逃してはならない。これなしには探究をなすことはできないからだ。定義された事柄すなわち〈何であるか〉のうち,或るものは獅子鼻のごときものであり,或るものは凹みのごときものである。これらが異なっているのは,一方で獅子鼻は質料によって結合されているが (獅子鼻は凹んだ鼻だから),凹んでいることは感覚される質料を欠いているから。実際,全ての自然的事物は獅子鼻と同様に語られるので––例えば鼻・眼・顔・肉・骨,総じて動物が,また葉・根・樹皮,総じて植物が,そうであるように (というのも,これらのどれの説明規定も運動を欠いてはおらず,むしろ質料を有するから) ––,自然的事物において〈何であるか〉を探求し定義することをいかにしてなすべきか,またなぜ,幾つかの学知が,質料を欠いてはいない限りの魂をめぐっても観照すべきなのか,は明らかである。

要約

  • およそ思考的学知は何らかの〈あるもの〉の原理・原因を探求する。
    • ただし端的に〈あるもの〉ではなく,その一部の類について探求する。
    • また〈何であるか〉を論証するのではなく,それを出発点として他の事柄を論証する。
    • また類自体が〈あるかどうか〉も学知そのものの範疇外にある。
      • 〈あるかどうか〉は〈何であるか〉と同じ思考によって明らかにされる。
  • 自然学は,実践的/製作的/観照的学知の中では,三つ目に属する。
    • 自然的事物の原理は事物自体に内在し,それとは別の製作者・行為者の内にはないから。
    • ただし (より限定するなら),自然学は (i) 運動可能な (ii) 大抵の場合に説明規定に即する (ii) 離在しない実体について観照する。
  • 自然的事物の〈何であるか〉はつねに質料込みで語られるので,それらを定義すべき方式は明らかである。
    • また,そのことゆえに,自然学は質料込みの魂をも扱う。

訳注

  • ἐνίας (1026a5) を Ross はなぜか 'unusual singular ἐνίας' だとするが (また Kirwan: 'a certain kind of soul'),素直に pl. acc. と捉え ἐπιστήμας を了解するほうが良いだろう。