ボルタンスキー,グルニエ『クリスチャン・ボルタンスキーの可能な人生』
国立新美術館の回顧展に前に行った一ヶ月ほど前に,いわば予習のつもりで読み始めたのを半分ほど読みさしにしていた。キュレーターの友人が聞き手を務めるインタヴューで,自身の生い立ちや作風の遍歴,そして芸術観が惜しみなく語られている。ボルタンスキー展自体はすごく感銘を受けたというわけではないのだけど(つまらなかったわけではないが,ただ多分ぼくはボルタンスキーが捉えようとする仕方では死にあまり関心がないのだと思う),それでも作品群の舞台裏は興味深かった。例えばよく話題に上る作品の一つが「死んだスイス人」シリーズで,彼ら全員の歴史を−−自分の作品の中での歴史,そして幾人かについては生前の歴史も−−覚えている,と語っていたのが印象に残った。