渡辺訳『テアイテトス』

講談社学術文庫ちくま学芸文庫版を改訂した新訳。このレーベルの他のギリシア哲学の作品同様,本書にも初学者向けの長めの解説が付されており (350-479頁),その注では現代の研究状況にも折りに触れて言及されている。第二部の議論と『ソフィスト』篇との接続如何など多くを学んだ。訳語として μὴ ὄν を「ありもしない」と訳すのは良さそうに思う (435頁,注30)。

今回再読したのは研究会の予習も兼ねていて,他にも少しだけプラトン認識論関連のにわか勉強をしたが,なかでも以下の論文は面白かった。ἐπιστήμη の持つ行為者性の含意に着目することで Burnyeat 解釈に見られる陪審員事例の不整合を解消する試み。

  • Tamer Nawar (2013) "Knowledge and True Belief at Theaetetus 201a–c", British Journal for the History of Philosophy 21(6), 1052-1070.