読書

石井雅巳『西周と「哲学」の誕生』

石井雅巳 (2019)『西周と「哲学」の誕生』堀之内出版. 西周の入門書.3章からなり,各々,(1) 高名な「哲学」などの訳語創出のプロセス,(2) ひらがなやローマ字の推奨論・言文一致論,(3) 官僚としての仕事,を扱っている*1. *1:なお 1-2 章は以下の論文…

中野耕太郎『20世紀アメリカの夢』

中野耕太郎 (2019)『20世紀アメリカの夢: 世紀転換期から1970年代』(シリーズ アメリカ合衆国史③) 岩波新書. 20世紀初頭から1973年までのアメリカ史.この時期のアメリカにおける「社会的なもの」への意識の高まりと,社会改革の実現に絶えずつきまとった両…

デュルケーム『社会学的方法の規準』

エミール・デュルケーム『社会学的方法の規準』菊谷和宏訳,講談社学術文庫,2018年. 1895年の著作.『社会分業論』以後,『自殺論』以前.「社会的事実」を適切に取り出して分析できる科学的方法がまだなく,これを編み出さなければならない,という問題意…

R. タック『トマス・ホッブズ』

リチャード・タック『トマス・ホッブズ』田中浩・重森臣広訳,未來社,1995年。政治思想史家によるホッブズの入門書。OUP の Past Masters シリーズの一冊として刊行され,後に VSI シリーズで再版されている。コンテクストとしての人文主義とメルセンヌ・サ…

上野修『スピノザ『神学政治論』を読む』

上野修 (2014)『スピノザ『神学政治論』を読む』ちくま学芸文庫。 『神学政治論』(TTP) の入門的解説書。3部構成。第I部は「思考のエッセンス」シリーズからの再録で,独立した解説になっている。第II部は詳細な各論,第III部は現代思想 (アルチュセール,ネ…

ボルタンスキー,グルニエ『クリスチャン・ボルタンスキーの可能な人生』

クリスチャン・ボルタンスキー,カトリーヌ・グルニエ (2010)『クリスチャン・ボルタンスキーの可能な人生』佐藤京子訳,水声社。 国立新美術館の回顧展に前に行った一ヶ月ほど前に,いわば予習のつもりで読み始めたのを半分ほど読みさしにしていた。キュレ…

5-7月に読んだ本

5月 奥村隆 (2014)『社会学の歴史I: 社会という謎の系譜』有斐閣アルマ。 原武史 (2019)『平成の終焉』岩波新書。 山内志朗 (2003)『ライプニッツ: なぜ私は世界にひとりしかいないのか』NHK出版。 日本歴史学会 (2019)『日本歴史』第853号。 G. W. ライプニ…

ヴォルテール『寛容論』

ヴォルテール『寛容論』中川信訳,中公文庫,2011年。 1762年のトゥールーズで,ある新教徒が子殺しの冤罪で処刑され,残る一家も離散の憂き目に遭った。被害者の姓を取って「カラス事件」と呼ばれるこの迫害に対して,ヴォルテールは名誉回復の運動を起こす…

盛山ほか『社会学入門』

盛山ほか編著 (2017)『社会学入門』ミネルヴァ書房。 社会学の教科書。良書だと思う。社会の諸側面を切り出す形でトピック別に章立てされており,「〇〇 (の) 社会学」についての各々の専門家による要を得た記述を読むことができる。

プリンチペ『科学革命』

Lawrence M. Principe『科学革命』菅谷暁・山田俊弘訳,2014年。 VSI シリーズ The Scientific Revolution (2011) の訳書。16-7世紀科学がそれ以前の諸学をどう継承し,何を新たに生み出したか,を簡明に解説している。第1章「新しい世界と古い世界」では前…

久米ほか『政治学』

久米郁男ほか『政治学』有斐閣,2003年。 New Liberal Arts Selection の一冊。ざっと目を通したが,あとで補訂版が出ているのに気付いた。とはいえ章構成は同じ。政治学全体がカヴァーされているのかは判らないが,少なくともトピックは幅広い。章末に簡単…

佐藤康宏『日本美術史』

佐藤康宏『日本美術史』放送大学教育振興会,2014年。 一週間ほど前に読んだのだけど記録を忘れていた。美術史専攻の人に勧められた本。縄文土器から戦中期の美術までを扱う。対象のもつ様々な特徴を記述に落とし込む手つきの鮮やかさが印象に残る。なかでも…

渡辺訳『テアイテトス』

プラトン『テアイテトス』渡辺邦夫訳,光文社古典新訳文庫,2019年。 講談社学術文庫版ちくま学芸文庫版を改訂した新訳。このレーベルの他のギリシア哲学の作品同様,本書にも初学者向けの長めの解説が付されており (350-479頁),その注では現代の研究状況に…

笙野頼子『笙野頼子三冠小説集』

笙野頼子『笙野頼子三冠小説集』河出文庫,2007年。 「タイムスリップ・コンビナート」「二百回忌」「なにもしてない」の三作を収める。旧作を文庫で出すために文学賞受賞作だけをまとめたのだという。著者の作品を読むのは『極楽・大祭・皇帝』に続いて二冊…

マンシェット『眠りなき狙撃者』

ジャン=パトリック・マンシェット『眠りなき狙撃者』中条省平訳,河出文庫,2014年。 『愚者が出てくる,城寨が見える』から続けざまに読む。プロットの緻密さや映像の鮮明さに鑑みて,全体的な完成度はこちらの方が高いと思う。原題が予示する最後の一段落…

マンシェット『愚者が出てくる,城寨が見える』

マンシェット『愚者が出てくる,城寨が見える』中条省平訳,光文社古典新訳文庫,2009年。 6年前に梅田の紀伊國屋で「ほんのまくら」フェアというのをやっていて,そこで買った本だったと思う。買ったはいいが一ページ目から人間が惨殺されるのでついていけ…

ルーベンスタイン『中世の覚醒』

リチャード・E. ルーベンスタイン『中世の覚醒: アリストテレス再発見から知の革命へ』小沢千重子訳,ちくま学芸文庫,2018年。 アリストテレスのインパクトを中心にすえながら,中世を通じた理性と信仰をめぐる様々なイデオロギーの角逐を描いている。哲学…

ブルケルト『ギリシャの神話と儀礼』

ヴァルター・ブルケルト (1985)『ギリシャの神話と儀礼』橋本隆夫訳,リブロポート。[Walter Burkert (1979) Structure and History in Greek Mythology and Ritual. University of California Press.]

桑子敏雄『エネルゲイア』

桑子敏雄『エネルゲイア』東京大学出版会,1993年。 「エネルゲイア」概念を中心に置いてアリストテレス哲学の様々な領域を論じる論文集。第一部「古代アテネの思想空間と「エネルゲイア」の概念」はアリストテレスがエネルゲイア概念を導入するコンテクスト…

モミリアーノ『伝記文学の誕生』

A. モミリアーノ (1982)『伝記文学の誕生』柳沼重剛訳,東海大学出版会。[Arnaldo Momigliano (1971) The Development of Greek Biography, Harvard University Press.] 古代ギリシアにおける伝記の誕生と発展をテーマにした講義録。前5世紀に伝記・自伝の起…

スカール,カロウ『魔女狩り』

ジェフリ・スカール,ジョン・カロウ (2004)『魔女狩り』(ヨーロッパ史入門) 小泉徹訳,岩波書店。[G. Scarre, J. Callow (2001) Witchcraft and Magic in Sixteenth- and Seventeenth-Century Europe, 2nd ed., Palgrave.] 標題のトピックについての概説書…

松村一男『神話学入門』

松村一男『神話学入門』講談社学術文庫,2019年。 『神話学講義』(角川書店,1999年) の文庫版。神話学の学説史。ミュラー,フレイザー,デュメジル,レヴィ=ストロース,エリアーデ,キャンベルの6人を中心に論じる。大学の講義を元にしたものらしく,叙述…

森本あんり『異端の時代』

森本あんり『異端の時代』岩波新書,2018年。 神学者による正統/異端論。叙述は三つのトピックを行き来する。第一にキリスト教における正統と異端のあり方,第二に正統/異端概念全般の問い直し,第三にそれに基づく現代文明批評。

滝口『ヘーゲル哲学入門』

滝口清栄『ヘーゲル哲学入門』社会評論社,2016年。 川瀬和也さんのヘーゲル入門書紹介 (http://kkawasee.hatenablog.com/entry/2018/08/07/173302) で挙げられているものをちょっとずつ読む (長谷川本,加藤記事は既読)。 通時的にヘーゲルの思想を追うスタ…

ビアード『SPQR』

メアリー・ビアード (2018) 『SPQR: ローマ帝国史』上下巻,亜紀書房。 邦訳の副題は「ローマ帝国史」だけれども,実際は建国神話の時代からの通史になっている (下限はカラカラ帝期)。原題は SPQR: A History of Ancient Rome.

チウ『ここではないどこかへの欲求』

Agnes Chew (2017) The Desire for Elsewhere, Math Paper Press. シンガポールの作家による韻文を交えた一種の旅行エッセイ。ブックデザインが優れている。内容には特筆すべき点はない。 Math Paper Press はシンガポールの書店 BooksActually が7年前に始…

黒田『行為と規範』

黒田亘 (1992)『行為と規範』勁草書房。 一月から読んだものを記録しておく。 黒田亘 (1928-1989) の遺稿集。二部からなり,I「行為と規範」は放送大学のテキストの再録,II「志向性と因果性」は標題のテーマに関する三篇の公刊論文。

今週読んだ本

加藤秀一『はじめてのジェンダー論』有斐閣ストゥデイア,2017年。 ロレンス・スターン『トリストラム・シャンディ』下巻,朱牟田夏雄訳,1969年。

今週読んだ本

G. E. R. ロイド『初期ギリシア科学: タレスからアリストテレスまで』山野耕治・山口義久訳,法政大学出版局,1994年。 ローレンス・スターン『トリストラム・シャンディ』中巻,朱牟田夏雄訳,岩波文庫,1969年。 ハーバート・A・サイモン『経営行動: 経営…

今週読んだ本

斎藤憲『ユークリッド『原論』とは何か: 二千年読みつがれた数学の古典』岩波書店,2008年。 熊野純彦『レヴィナス: 移ろいゆくものへの視線』岩波現代文庫,2017年。