池上俊一 (2018)『フィレンツェ』

最近マキァヴェッリフィレンツェ史』についての論文を読んで,フィレンツェ史そのものにも少し興味が湧いたので,最近出た新書を読んでみる.古代から現代に至るまでの通史であり,特に社会・文化両面における中世とルネサンスの連続性が浮き彫りにされている.連続性を示すのは,第一に家族・親族関係を中心とし,かつそれを擬制して成り立つパトロネージであり,社会の最小単位に至るまで多くの階層をなす人的ネットワークが中世からルネサンスに至るまで世代を継いで張り巡らされていた (4章).第二は宗教性であり,15世紀フィレンツェは公私両面で生活の隅々まで霊性が行き渡っていた (5章),と論じられている.そのほか政治文化と連動する建築史の叙述なども興味深い.