『自然学』A4 #2 アナクサゴラス批判

Phys. 187b7-188a2.

[187b7] 無限である限りの無限なものが認識不可能であるなら,多さあるいは大きさに関して無限であるものは何らか量に関して認識不可能であり,形相に関して無限であるものは質に関して認識不可能である。原理が多さや形相に関して無限であるとき,それらからなるものを知ることは不可能である。というのも,「何からなるか」と「どれほどの量からなるか」を知っているとき,複合物をそのように知っていると我々は想定するのだから。

[187b13] さらに,当のものの部分が大きさと小ささに関してどれほどの大きさでもありうるなら,それ自身も〔どれほどの大きさでもありうる〕ことが必然であり (私が言っているのは,そうした諸部分のうちの何かで,内属するそれへと全体が分割されうるところのものだが),実際には動植物が大きさや小ささに関していかなる大きさでもあることが不可能であるのだから,諸部分のうちのどれもそうであることが不可能であることは明らかである。というのも,全体も同様であるだろうから。さて動物には肉や骨やそうした諸部分があり,植物には果実がある。したがって,肉や骨や他の何かが,大きさの点で,より大きなものへ,あるいはより小さなものへと,どんな大きさにもなることが不可能であることは明らかである。

[187b22] さらに,もしそうした全てのものが互いのうちに内属し,生成するのではなくむしろ内在して析出され,より多いものに基づいて呼称され,何であれあらゆるものから何であれあらゆるものが生成して (例えば肉から水が,水から肉が析出されるように),全ての限られた物体が限られた物体によって廃棄されるとすれば,各々のうちに各々が属することが可能でないことは明らかである。というのも,水から肉が取り去られ,そして今度は他の肉が残りの水から分離によって生じるとすると,析出されるものがつねにより少なくなるとしても,それでもやはり小ささの点である大きさを超えはしないからだ。したがって,析出が止むなら,全てのものが全てのものに内在するわけではないし (なぜなら,残りの水に肉が内属しないだろうから),析出が止まらずにつねに除去が続くのなら,限られた大きさのうちに,同様に限られているが量において無限のものが内在するだろう。だがそれは不可能である。

[187b35] 以上のことどもに加えて,何かが除去されたとき,全ての物体がより少なくなることは必然であり,他方で肉の量が大きさや小ささの点で限られているなら,最小の肉からはいかなる物体も析出されないであろうことは明らかである。というのも,最小の肉よりも小さいことになるだろうから。

要約

アナクサゴラス理論に対し数点反論する (次回に続く)。

  1. 原理が (量・質に関して) 無限なら,原理から生じるものは認識不可能である。
    • カテゴリー C に属する尺度 M に関して無限なものは,M に関して認識不可能である。
    • したがって,原理が形相・多さという尺度に関して無限であれば,質・量に関して認識不可能である。
    • 他方で,複合物の知識は,構成要素 (原理) の「何であるか」と量の知識である。
  2. 肉や骨が任意の大きさを取ることはありえない。
    • 部分が任意の大きさを取りうるなら,必然的に全体もそうである (大前提)。
    • だが,動植物は全体において任意の大きさを取ることはできない (小前提)。
    • したがって,部分も任意の大きさを取ることはできない (結論)。
  3. 析出過程がいつまでも続くとしても,どこかで止まるとしても,不条理。
    • いつまでも続くとすれば,限られた大きさのうちに無限量のものが内在することになる。
    • どこかで止まるとすれば,残った物体には析出されるものはもはや存在しないことになる。(「全てが全てのうちに」に矛盾。)
  4. 最小の物体からは何ものも析出されえない。

内容注

  • 第1の論証は「形相」「何であるか」と「質」という語をほぼ互換的に用いている。στοιχεῖον ないし ὁμοιομερῆ なら同一視できる?
  • 第3の論証は第2の論証を前提している: 部分の大きさ・小ささには限度がある (Ross, 485f.)。
    • これはよいと思う。Charlton はこれに反対しているが (p.65),彼自身の提案は却って尤もらしくない。
  • Cerami*1 は第3の論証を「全てが全てのうちに」説への批判,第4の論証を「全てから全てが生成する」説への批判と捉えるが,そのように区別するポイントはよく分からなかった。ただこれは自分がアナクサゴラスの体系に無知であるためかもしれない。

*1:Cristina Cerami, "Physics I.4" in Quarantotto 2018. まだ今回の範囲の関連箇所 (120-122) しか見ていない。