モミリアーノ『伝記文学の誕生』
- A. モミリアーノ (1982)『伝記文学の誕生』柳沼重剛訳,東海大学出版会。[Arnaldo Momigliano (1971) The Development of Greek Biography, Harvard University Press.]
古代ギリシアにおける伝記の誕生と発展をテーマにした講義録。前5世紀に伝記・自伝の起源を探り,前4世紀のクセノフォンやプラトンらを経て,ヘレニズム期,ローマに至る系譜を辿る。
ただ後代に関する議論になると自分の知識が乏しいためにあまり議論を追えない箇所が多かった (以下では古典期を扱う第III章までの内容について少しメモしておく)。いずれにせよ何度か読み返すべき本だと思う。とくにソクラテス文学やペリパトス学派に関する叙述は哲学史研究にも直接間接に参考になる。
続きを読む松村一男『神話学入門』
- 松村一男『神話学入門』講談社学術文庫,2019年。
『神話学講義』(角川書店,1999年) の文庫版。神話学の学説史。ミュラー,フレイザー,デュメジル,レヴィ=ストロース,エリアーデ,キャンベルの6人を中心に論じる。大学の講義を元にしたものらしく,叙述は平明。第一章が全体の簡便な梗概になっているので,大雑把に内容を知りたい場合はここを読めば良い。なお「学術文庫版あとがき」では,本書で概観された範囲以後の動きとして,ブルケルトやジラールの研究,およびヴィツェル,ベリョーツキンの「世界神話学」が挙げられている。個人的には古典学の枠内で何となく知っていた人々 (Cornford や Murray) の神話学史的な位置付けが少し分かったのが収穫だった (第4章)。