モミリアーノ『伝記文学の誕生』

  • A. モミリアーノ (1982)『伝記文学の誕生』柳沼重剛訳,東海大学出版会。[Arnaldo Momigliano (1971) The Development of Greek Biography, Harvard University Press.]

古代ギリシアにおける伝記の誕生と発展をテーマにした講義録。前5世紀に伝記・自伝の起源を探り,前4世紀のクセノフォンやプラトンらを経て,ヘレニズム期,ローマに至る系譜を辿る。

ただ後代に関する議論になると自分の知識が乏しいためにあまり議論を追えない箇所が多かった (以下では古典期を扱う第III章までの内容について少しメモしておく)。いずれにせよ何度か読み返すべき本だと思う。とくにソクラテス文学やペリパトス学派に関する叙述は哲学史研究にも直接間接に参考になる。

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スカール,カロウ『魔女狩り』

  • ジェフリ・スカール,ジョン・カロウ (2004)『魔女狩り』(ヨーロッパ史入門) 小泉徹訳,岩波書店。[G. Scarre, J. Callow (2001) Witchcraft and Magic in Sixteenth- and Seventeenth-Century Europe, 2nd ed., Palgrave.]

標題のトピックについての概説書。小著だがとても勉強になった。巻末のコメント付き関連文献表も有用。興味をもった叙述を要約的に抜き書きする。

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SEP「形而上学的根拠付け」Bliss and Trogdon, "Metaphysical Grounding" #2

  • Ricki Bliss and Kelly Trogdon (2016) "Metaphysical Grounding" The Stanford Encyclopedia of Philosophy (Winter 2016 Edition), Edward N. Zalta (ed.), pp.16ff.

記事の後半部。前半部は根拠付け概念そのものの内実を議論していたが,以下では様々な応用や懐疑論が取り上げられる。わりあい専門的な議論が多く所々ついて行けていないが,理解できる範囲で要約する。

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松村一男『神話学入門』

『神話学講義』(角川書店,1999年) の文庫版。神話学の学説史。ミュラーフレイザーデュメジルレヴィ=ストロースエリアーデ,キャンベルの6人を中心に論じる。大学の講義を元にしたものらしく,叙述は平明。第一章が全体の簡便な梗概になっているので,大雑把に内容を知りたい場合はここを読めば良い。なお「学術文庫版あとがき」では,本書で概観された範囲以後の動きとして,ブルケルトジラールの研究,およびヴィツェル,ベリョーツキンの「世界神話学」が挙げられている。個人的には古典学の枠内で何となく知っていた人々 (Cornford や Murray) の神話学史的な位置付けが少し分かったのが収穫だった (第4章)。

森本あんり『異端の時代』

  • 森本あんり『異端の時代』岩波新書,2018年。

神学者による正統/異端論。叙述は三つのトピックを行き来する。第一にキリスト教における正統と異端のあり方,第二に正統/異端概念全般の問い直し,第三にそれに基づく現代文明批評。

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バンヴェニスト「術語 scientifique の成立過程」

  • エミール・バンヴェニスト (2013)「術語 scientifique の成立過程」『言語と主体: 一般言語学の諸問題』阿部宏監訳,前嶋和也・川島浩一郎訳,岩波書店,252-258頁。

パラパラめくっていたら興味深い一文に行き当たった。« scientifique » というフランス語は『分析論後書』のラテン語訳に淵源する,と主張する論考 (原論文は 1969 年)。

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SEP「形而上学的根拠付け」Bliss and Trogdon, "Metaphysical Grounding" #1

  • Ricki Bliss and Kelly Trogdon (2016) "Metaphysical Grounding" The Stanford Encyclopedia of Philosophy (Winter 2016 Edition), Edward N. Zalta (ed.), pp.1-15.

ここ数ヶ月アリストテレスの αἰτία 論を勉強していて,現代で対応する議論となると一つは grounding かしら,と当たりを付けている*1。よし的外れであるにしても,それ自体として学んでおいて損はないだろう。

記事は半分に区切る。前半は第5節まで。

*1:関連してボルツァーノの Abfolge 論にも少し興味があるが,こちらはいよいよ何から読めばいいのか分からない。

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