ルーベンスタイン『中世の覚醒』

アリストテレスインパクトを中心にすえながら,中世を通じた理性と信仰をめぐる様々なイデオロギーの角逐を描いている。哲学者や神学者が書く中世思想史とはかなり趣が違った叙述になっていると思う。やや分厚いけれどもリーダブルなので万人に勧められる。伝記的叙述も楽しい(最大のヒーローはアリストテレスだがアベラールの章なんかもノリノリで,彼が死ぬくだりには「弁証法の達人,逝く」というすごい見出しが付いている)。

ブルケルト『ギリシャの神話と儀礼』

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桑子敏雄『エネルゲイア』

エネルゲイア」概念を中心に置いてアリストテレス哲学の様々な領域を論じる論文集。第一部「古代アテネの思想空間と「エネルゲイア」の概念」はアリストテレスエネルゲイア概念を導入するコンテクストを主として論理学的側面から探求しており,プラトンのみならずテオフラストス,スペウシッポス等の同世代の議論も視野においた叙述に特色がある (特に第2, 4章)。第二部「「エネルゲイア」の文脈と実体の問題」はエネルゲイア概念そのものの内実を論じ,第三部「心と価値」は魂論 (桑子訳では「心」) と倫理学に焦点を合わせる。

内容はまだあまり吟味できていないが,再読時のために若干メモしておく。第三章は「エピステーメー (「論証能力」) は個別的対象に関わらない点で感覚能力と区別される。行為の推論は後者が行う」(↔ 加藤「普遍の把握について」) と主張しており,「エパゴーゲー」の内実如何と合わせて要検討*1第四章はテオフラストス『形而上学』を「秩序に対する人間の認識の限界」の設定 (e.g. 目的論批判) という観点から読むもので,(テクストを全く知らないけれども) 面白い。第六章「類としての質料」は Owen の反 Jaeger 的発展史観*2を批判しており,Owen 論文と読み比べて考えたい。第八章「ヌースについて」は近々 De An. Γ4 を読むときに参照すべき。

*1:また推論の表記法につき Kneales を参照のこと。

*2:Owen, "The Platonism of Aristotle" が参照されている (未読)。cf. Owen, "Logic and Metaphysics in Some Earlier Works of Aristotle".